訪問介護の営業に時間と人手をかけても、成果が見えにくい。
紹介件数が伸びない。新規が続かない。
それでも、ケアマネとの関係づくりをやめるわけにはいかない。

多くの事業所がこのジレンマを抱えています。
訪問営業を重ねても、ケアマネは多忙でゆっくり話す時間が取れない。
パンフレットや名刺を残しても、後で思い出してもらえるとは限らない。
そして、飛び込みで訪問しても不在で空振りばかり。
問題は「営業をしていないこと」ではなく、
営業の成果を支える仕組みが欠けていること。
ケアマネが事業所名を検索したときに、
信頼できる情報がすぐに見つかるかどうか。
それが、紹介につながるかどうかを左右しています。
この記事では、訪問介護事業所がケアマネ営業で成果を出すために、
どのようにホームページを営業ツールとして活用できるかを解説します。
営業を「人に会うこと」だけで終わらせないために、
いま整えるべき仕組みを考えましょう。
この記事のコンテンツ
訪問介護の営業、現実と課題
訪問介護の事業所数は全国で3万件を超えました。
数字だけ見れば“競争が激しい業界”のように映りますが、
その内実は、大手・中規模法人への集中と小規模事業所の淘汰が同時に進む二極化の状態です。
採用力と効率化で進む「大手優位」の構造
採用市場では、知名度と待遇で優位に立つ大手法人が有利です。
ICT導入や記録システム、LINEWORKS等のツールの運用効率化も進み、人材確保から営業・運営までスケールメリットを発揮しています。
一方で、小規模事業所は、以下のような課題を抱えています。
- 求人を出しても応募がない
- 営業に出ても人手が足りず対応が追いつかない
- 利用者が減っても代替の紹介ルートがない
ケアマネ営業の差で埋もれる小規模事業所の現実

多くの小規模事業所は、丁寧なケア・柔軟な対応に強みを持っています。
しかし、その“良さ”が伝わる仕組みを持っていないことが課題です。
ケアマネが検索しても情報が出てこない、
紹介したくても家族に説明できる資料がない――。
結果として、サービスの質が高い事業所であっても、営業力の弱さから目に留まらないという状態が起きています。
厚労省の介護サービス情報公表システムのオープンデータによれば、
ホームページを保有している訪問介護事業所は全事業所のうち約59%。
デイサービス約79%、有料老人ホーム約90%に比べると、この数は大きく遅れています。
※厚生労働省「介護サービスの情報公表システムオープンデータ」
つまり、いまは「サービスの差」よりも「情報の差」で選ばれる時代。
選ばれる事業所には理由があるのです。
小規模事業所が勝てる営業戦略とは
小規模事業所には、大手にない強みもあります。
- スタッフや管理者の顔が見える
- 現場判断が早く、柔軟な対応ができる
- 利用者・ケアマネとの距離が近い
この「顔の見える距離感」を営業でもっと活かすこと。
ホームページでその空気を伝えること。
それが、今の時代における最も費用対効果の高い営業戦略です。
ケアマネとしての視点や、介護分野に特化したウェブ制作を行ってきた経験から、訪問介護の営業力を最大化するホームページのヒントを解説します。
ケアマネが知りたい情報を整理する
営業の目的は「自分たちを知ってもらうこと」ではなく、
「相手の判断に必要な情報を提供すること」です。
ケアマネは毎日の業務の中で、限られた時間と情報をもとに利用者へサービスを提案しています。
だからこそ、ホームページに載せる内容も“相手の思考プロセス”から逆算する必要があります。
1. ケアマネ営業では“顔が見える情報”が信頼を生む
「ケアマネが求める情報」と言っても、一括りにはできません。
実際には、それぞれのケアマネが抱える利用者像や得意分野によって関心が違います。
たとえば──
- 男性ヘルパーを希望する利用者が多いケアマネ(男性が多い)
- 医療的ケアを必要とするケースを多く担当するケアマネ(訪問看護併設など)
- 家族との調整に慎重なケアマネ
こうした“個”のニーズを思い出すことが、情報設計の出発点になります。
過去の営業で受けた質問や要望をメモしておくと、
それがそのままホームページのよくある質問(Q&A)に掲載できる重要なコンテンツになります。
Q. 男性ヘルパーはいますか?
A. 現在2名在籍しており、車いすの段差での介助や同性介助のご希望にも対応可能です。
たったこれだけで、「そういえばこの事業所、男性スタッフがいたな」とケアマネの記憶に残ります。
また、「男性」というキーワードがホームページにあることで「○○市 訪問介護 男性」と検索するケアマネがたどり着きやすくなります。検索される回数が少なくとも、ニッチなニーズを抑えていくことで、契約につながる確率が高くなります。
「みんなに伝えたい」では誰にも刺さらない。誰か一人を思い浮かべて伝えるメッセージは同じような状況にある人にも届くのです。
2. ホームページに載せるべき事業所選択の判断材料とは

経営理念や想いももちろん大切です。
ただ、ケアマネがまず見るのは「紹介して問題ないか」「利用者に合うか」という判断材料。今まで利用したことのない事業所にお願いするときは、どんなケアマネでも最初は心配なんです。
具体的な情報として、以下のような項目は必須です。
分類 | 内容 |
---|---|
サービス内容 | 対応できるケア・時間帯・緊急対応の可否 |
人員体制 | 男性ヘルパーの有無・医療ケアの経験など |
料金・加算 | 自己負担額の目安・加算 |
地域対応 | 対応エリアと交通手段 |
連絡体制 | 相談窓口、連絡可能時間、連絡手段 |
これらが整理されているだけで、ケアマネが「紹介しても大丈夫」と思えます。ケアマネとしては、この事業所の選定基準としての「確証」が欲しいので、「~だから選んだ」と言ってもらえるようになるために、オープンにできる情報はオープンにすることをお勧めします。
ケアマネ向けにケアマネが欲しているであろう情報をまとめた、「ケアマネ用ページ」を別に作ってもいいと思います。
3. 「できないこと」も正直に書くことが信頼に
意外と抜けがちなのがここ。
できないことを明確に示すと、「正しく判断ができている」「丁寧に説明ができる」事業所として信頼されます。
当事業所では、質の高い継続的なサービスを提供するため、担当ヘルパーを固定しない複数担当制を基本としております。
これは、緊急時やヘルパーの欠員時にもサービスが途切れることなく、利用者様へ安定した支援を確実に提供するための体制です。全ヘルパーが常に最新の情報を共有し、チームとして利用者様をサポートすることで、一貫したケアを実現します。
BCP(事業継続計画)の観点からも、属人化を防ぎ、常に安心してご利用いただける環境を整えております。
利用者様のご不安やご質問がございましたら、いつでも当事業所までお気軽にご連絡ください。
不安を隠すより、制約の中でどう対応しているかを示す。
それが“現場を理解している事業所”という印象を残します。
ケアマネは「熱意」よりも「安心できる情報」を求めています。
だから、営業トークの再現ではなく、ケアマネが判断しやすい構成と表現を心がけることが成果につながります。
訪問営業とホームページを連動させる方法

訪問介護の営業は、顔を合わせて信頼を積み上げる仕事です。
パンフレットを配り、雑談を重ね、利用者の話題を通して関係を育てる。
その積み重ねが紹介につながることを、誰もが実感しています。
ただ、訪問営業だけで成果を出すのは難しくなっています。
ケアマネは多忙で、面談の時間は限られる。
せっかく関心を持ってもらっても、
後から事業所を検索して情報が出てこなければ、その印象はすぐに薄れてしまいます。
1. ホームページを「営業の後押し」に使う
訪問営業を「人」、ホームページを「仕組み」として位置づける。
名刺・チラシ・パンフレットには必ずURLやQRコードを入れておき、
会話の後に自然に検索してもらえるようにします。
ホームページには、営業で話した内容と同じ“温度”を置いておくのがポイント。
たとえば──
- ケアマネからよく聞かれる質問をFAQとして掲載する
- スタッフや事業所の雰囲気が伝わる写真やコメントを載せる
- 「この前話していた○○の件、こちらに詳しく載せてます」と案内できる構成にしておく
営業とWebのトーンが一致すると、「本当に言っていた通りの事業所だ」と信頼が深まります。
2. 会えないときの“営業担当”として機能させる
訪問しても担当不在ということは珍しくありません。
そのときこそ、ホームページが24時間対応のもう一人の営業担当になります。
ケアマネが興味を持って検索したとき、
すぐに事業所の強み・人柄・対応範囲が見える。
その瞬間に“印象が残る”かどうかで、次の紹介につながります。
紙の資料は数日で埋もれても、Webの情報は残ります。
営業の努力を“記録に変える”手段としてのホームページ、
という発想を持つと投資の意味が変わってきます。
3. 営業現場からホームページを育てる
ホームページ制作や運用を外注任せにせず、
営業やサービス提供責任者が“ネタを出す”形で育てるのが理想です。
営業でよく聞かれる質問、ケアマネが反応した一言、
利用者や家族からの相談傾向――そうした“現場の声”を
Web担当者に共有するだけで、ホームページは生きた営業ツールに変わります。
訪問営業とホームページは、どちらか一方では成果が出ません。
人の信頼を形に残すのがホームページであり、
ホームページで生まれた興味を人が繋ぐのが営業。
この往復ができる事業所は、紹介が途切れません。
事例を活用した訪問介護の営業強化術

訪問介護の営業でいちばん難しいのは、
ケアマネが“探しているタイミング”にぴったり出会うことです。
実際、ケアマネは常に複数のケースを抱え、
担当者会議、記録、家族対応、研修や地域の会議など、日々の予定で埋まっています。
相談があった瞬間に、じっくり検索して比較する余裕などほとんどありません。
だからこそ、営業の鍵は「検索で出る」ことではなく、
必要なときに思い出してもらうこと。
そのための“種まき”が、ホームページであり、ホームページに掲載する事例です。
1. ケアマネ営業は「思い出してもらう回数」で決まる
ケアマネが検索窓を開くのはほんの一瞬。
それよりも多いのは、会話や資料、SNSなどで見かけた情報を、
後からふと「そういえば、あの事業所…」と思い出す場面です。
営業とは、接触回数ではなく思い出してもらう回数、つまり“想起回数”を増やすこと。
そのために、ホームページやSNSに、
ケアマネが利用者を思い浮かべやすい情報を置いておく。
- 男性ヘルパーが活躍している写真や紹介文
- 医療的ケアに対応した支援の工夫
- ご家族の安心につながった小さなエピソード
こうした情報は、“思い出すきっかけ”になります。
それを少しずつ積み重ねていくことが、営業の本当の力になります。
2. ホームページの事例が紹介につながる理由
ケアマネは、事例を見ると自分の利用者を思い出します。
読んだ瞬間に「あの人に合うかもしれない」と連想が起きる。
その記憶が数日後、支援会議や電話対応の中で蘇るのです。
事例:訪問看護と連携した看取り支援
終末期の利用者様に対し、訪問看護ステーションと連携し在宅看取りを支援。
褥瘡の悪化を防ぐため、訪問診療・看護・ケアマネと連携し、
連携ツールを使って画像などを共有しながら、最善のポジショニングを検討。
ご家族にも信頼していただき、最期まで安心して過ごしていただけました。
たった数行でも、読む人に具体的な利用者像が浮かぶ。
それが、“検索より強い”営業効果です。
3. 小さな更新でも信頼を積み重ねるコツ
1本の大きな成功例より、1か月に1本の短い記事のほうが信頼を積み重ねます。
- 毎月開催している法定研修の様子
- 新しく入ったユニークな経歴を持ったスタッフの紹介
- 国家資格の取得報告
こうした日常の出来事こそ、差別化になります。
そして、更新されている=今、ホットに動いている事業所、と感じてもらえる。
それがケアマネの安心につながります。
4. よくある質問(FAQ)を“営業トークの延長”にする
大切なのは、特別な文章を書くことではありません。
日々の会話を、残すこと。
「医療的ケアに対応できますか?」
「この地域も来てもらえますか?」
「男性ヘルパーはいますか?」
よくある質問を、FAQや記事として形にしておく。
それがそのまま営業資料になり、検索にも拾われ、
ケアマネの記憶にも残ります。
5. アマネに想起される仕組みを作る
営業は、「お願いすること」ではなく、
思い出してもらう仕組みを持つこと。
事例、よくある質問、事業所が発信するニュース。
それらの積み重ねが、忙しいケアマネの頭の中に小さな印象を残します。
その印象が紹介につながる。
検索されなくても、思い出されれば十分。
その瞬間、営業はすでに始まっています。
まとめ
訪問介護の営業は、数や根性では続きません。
会えない時間に何を残すか、が結果を分けます。
ホームページは、営業の代わりではなく営業の記録装置。
事例やFAQを通じて、ケアマネが思い出せる材料を置いておく。
その積み重ねが、紹介・信頼・採用のすべてにつながります。
大きな戦略より、地道な更新。
派手なPRより、具体的な記録。
それが、いまの訪問介護に合った“勝ち方”です。
まだ補助金の募集を行っている自治体も多いと思いますので、ぜひお早めにご検討を。

編集:
介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト編集部(主任介護支援専門員)
ケアマネジャーや地域包括支援センターなど相談業務に携わった経験や多職種連携スキルをもとに、介護福祉専門のウェブ制作ウェルコネクトを設立。情報発信と介護事業者に特化したウェブ制作サービスとAIを活用した業務改善提案を行う。