介護の事故報告書は、事故の経過、実際に行った対応、原因の検討、再発防止策を書き分けることが基本です。文章の上手さよりも、読んだ人が当時の状況を把握し、次の対応を判断できることが重要です。
ただ、事故対応を終えたあとに、何から書けばよいか迷うこともあります。管理者から詳しく書くよう求められても、どこまで説明すればよいのか分からない。原因や対策まで一人で考えようとして、手が止まることもあるでしょう。
この記事では、介護現場の事故報告書の書き方を、転倒事故の例文とともに解説します。最後に、起きたことを会話で伝えながら下書きを作成できるAIツール「じこボット」も紹介します。
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事故報告書の書き方は、事実を時系列で伝えることから
事故報告書には、確認できた事実を、時系列に沿って具体的に記載します。最初から報告書らしい文章にする必要はありません。まずは発見時刻、場所、利用者の状態、対応した職員、連絡や受診の経過をメモに残しましょう。

発生時刻と発見時刻を区別する
事故の瞬間を見ていない場合、発見した時刻を事故の発生時刻として断定しないことが大切です。
例えば、14時10分に居室の床に座っている利用者を発見したのであれば、発見時刻は14時10分ですが、転倒した時刻は分からない可能性があります。直前に確認した時刻も分かれば、その情報を添えます。
発生日時欄への記入は使用する様式の案内に従い、本文には「発生時刻不明、14時10分発見」などと補足します。分からない情報を推測で埋める必要はありません。
見たこと、聞いたこと、考えたことを区別する
職員が直接確認した事実と、本人や他の職員から聞いた内容は、情報源が分かる形で書きます。
| 曖昧な記載 | 具体的な記載例 |
|---|---|
| 勝手に歩いて転んだ | 居室入口付近の床に座っているところを職員が発見。本人はトイレへ行こうとしたと話した。転倒の瞬間は目撃していない。 |
| 痛そうだった | 本人から右膝が痛いとの訴えがあった。 |
| 家族に説明した | 14時30分、長女へ電話で発見時の状況と受診予定を説明した。 |
| 特に問題なし | 何を確認して異常がなかったのか、観察した内容を記載する。確認していない項目は書かない。 |
本人の発言だけで事故の経過が確定するとは限りません。一方、本人の言葉は重要な情報です。確認できた範囲を記録し、原因の判断は後の検討と分けます。
介護の事故報告書に書く内容と記入の順番
事故報告書は、各欄が何を伝えるための項目なのかを押さえると、内容の重複や抜けを減らせます。自治体や事業所の様式に合わせて、次の情報を確認してください。
| 項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 事業所・対象者の情報 | 事業所名、サービス種別、利用者の基本情報など、様式で求められる事項 |
| 事故の概要 | 発生・発見の日時、場所、事故の種類、直前の状況、発見時の状態 |
| 事故発生時の対応 | 実際に行った状態確認、職員への報告、医療職への相談、受診など |
| 事故発生後の状況 | その後の利用者の状態、家族等への連絡、今後の追加対応予定 |
| 原因分析 | 確認した事実から検討した要因、判断の根拠、引き続き確認する事項 |
| 再発防止策 | 変更する支援や手順、担当者、開始時期、効果を確認する方法 |
事故の概要に、その後の連絡や対策まで詰め込むと、何が起きたのかが伝わりません。事故そのものの経過と、発見後の対応を分けて書きます。
また、実施したことと予定していることも区別します。家族へ連絡済みなのか、これから説明する予定なのか。介助手順を変更したのか、次回の会議で検討する段階なのか。表現を分けることで、次に必要な対応が明確になります。
厚生労働省の事故報告書の原本様式
以下は、厚生労働省の介護保険最新情報Vol.1332に掲載された別紙様式の原本です。実際の提出には、自治体が指定する様式と要領を確認してください。

転倒事故の報告書の書き方・例文
転倒事故では、目撃した場面と発見した場面を区別し、発見後の対応まで記載します。以下は書き方を説明するための架空事例です。記載された対応は、実際の事故への処置や判断の手順を示すものではありません。

事故の概要の例文
〇年〇月〇日14時10分、職員が居室を訪問した際、利用者Aがベッド横の床に座っているところを発見した。13時50分の訪室時には、ベッド端に座っていた。転倒の瞬間を目撃した職員はおらず、発生時刻と転倒に至る動作は不明。本人はトイレへ行こうとしたと話し、右膝の痛みを訴えた。
この文章では、発見時刻、最後に確認した状況、発見時の姿勢、本人の説明、痛みの訴えを記載しています。目撃していない歩行や転倒の経過を、職員が見た事実のように書かないことがポイントです。
事故発生時・発生後の対応の例文
14時12分、看護職と管理者へ報告し、看護職が本人の状態を確認した。14時30分、長女へ電話で発見時の状況と受診予定を説明した。15時00分、職員付き添いで医療機関を受診。医師より右膝打撲と診断された。受診結果と医師からの説明内容を記録し、16時00分、長女へ受診結果を電話で報告した。
受診した場合は、診断名や検査・処置を、医療機関から確認できた内容に基づいて記載します。診断前の職員の見立てを、診断名として書くことは避けます。実際の報告書では、受診先や検査内容、その後の状態など、使用する様式で求められる情報を補います。
赤字の記入例で、各欄への書き分けを確認する
原本様式に、本文の架空の転倒事例と書き方のポイントを赤字で加えました。事故の経過、実施した対応、原因の検討、再発防止策をそれぞれの欄へ書き分ける際の参考にしてください。

事故報告書の原因分析は、確認した事実を根拠に書く
原因分析では、利用者の状態、支援方法、環境、情報共有や業務手順などを確認します。利用者が動いたことや、職員が見ていなかったことだけで検討を終えると、改善すべき条件が見えません。
例えば、トイレへ向かう途中の転倒が疑われる場合には、本人の普段の移動方法、排泄の訴え、必要な介助、履物、ベッド周辺の環境、職員間で共有していた情報を確かめます。
ただし、確認項目を並べることと、原因が分かることは別です。床が滑った、職員が不足していたなど、確認していない要因を事実として書かないようにしましょう。
原因が分からない場合も、確認できた範囲を書く
前述の架空事例で、本人が歩き始めた場面を誰も見ていなければ、転倒した動作を断定することはできません。その場合は、発生時の動作を特定できていないことを明記し、関連する記録や支援内容を確認します。新たに分かった情報は追記し、管理者や関係職種と検討を進めます。
事故報告書に必要なのは、早く一つの原因を決めることではなく、確認した情報と判断の根拠を残すことです。事故を経験した職員の反省だけで終わらせない考え方は、次の記事で詳しく解説しています。
事故報告書の再発防止策は、現場で何を変えるかを書く

再発防止策には、注意する、見守りを徹底するといった心構えに加え、具体的に変更する支援や手順を記載します。誰が、いつから、何を行うかまで決めることが大切です。
例えば、検討の結果、排泄支援の内容が本人の現在の状態と合っていなかったことが確認された場合には、次のように具体化できます。
担当介護職と看護職が排泄の時間帯、本人の訴え、必要な移動介助を確認し、〇月〇日までに支援方法を見直す。変更した支援内容は管理者が申し送りと支援記録へ反映する。運用開始から2週間後に、実施状況、本人の希望、同じ場面でのヒヤリハットを確認し、継続または修正を検討する。
これは検討後の対策を示す架空の例であり、すべての転倒に当てはめるものではありません。実際の要因や本人の生活に合わせて内容を決めます。
事故を防ぐために生活上の行動を一律に制限することも、安易に選ぶべき対策ではありません。本人の希望や尊厳を踏まえ、必要な支援と環境の改善を検討します。
事故報告書はいつ提出する?自治体への報告と内部記録
自治体へ提出する事故報告書と、事業所内で共有する事故・ヒヤリハットの記録は、対象や目的が異なります。自治体への報告対象に当たらない事例でも、内部で記録して改善につなげることには意味があります。
厚生労働省の介護保険最新情報Vol.1332(2024年11月29日)では、死亡に至った事故と、医師の診断を受け投薬・処置など何らかの治療が必要となった事故を、原則としてすべて報告する扱いとしています。その他の事故は自治体の取扱いによります。
同通知では、第1報を事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出し、その後の変化や原因分析、再発防止策を追加報告する扱いが示されています。第1報は、標準様式の項目1〜6までを可能な限り記載します。
原因や対策が完成するまで、初回の報告を待つという意味ではありません。実際の報告対象、速報の要否、期限、提出先、様式は自治体の要領を確認してください。
提出前に確認したい5つのポイント
- 発生時刻と発見時刻を区別し、不明な情報を断定していないか。
- 目撃した事実、本人の発言、原因の推定を書き分けているか。
- 実施済みの対応と、今後の予定を区別しているか。
- 再発防止策の担当者、開始時期、効果の確認方法が具体的か。
- 自治体の報告要領と様式を確認し、管理者や関係職種と内容を照合したか。
事故報告書の書き方が分かっても、文章にする負担は残る
事故報告書の基本を理解していても、対応の経過を思い出し、項目ごとに文章をまとめる作業には時間がかかります。書いた内容に不足があれば、管理者が聞き直し、職員が修正するやり取りも発生します。
ここで役立つのが、介護の事故報告書作成を会話で支援するAIツール「じこボット」です。起きたことを自分の言葉で伝え、質問に答えながら、報告書の下書きと原因・再発防止策の案を作成できます。

ショート動画で、じこボットのイメージを確認する
文章をまとめる負担をどう減らすのか、まずは紹介ショート動画をご覧ください。
会話で下書きを作り、職員・管理者が確認する
じこボットでは、文章入力、選択肢、音声入力を使って情報を伝え、確認した下書きをExcelで出力できます。完成した文章は職員や管理者が事実と照合し、原因や対策を検討します。
AIが提示する要因は検討の候補です。確認していない事実や、実施していない対応が含まれていないかを確認してください。自治体への提出は、提出先の様式や要領に合わせて行います。会話への氏名などの入力は控え、事業所のAI利用方針に従って利用します。
操作の流れや入力内容の扱いは、次の記事で確認できます。
事故報告書は、起きたことを伝え、次の支援へつなげる記録
事故報告書では、確認できた事実を残し、対応を共有し、原因の検討から具体的な改善へつなげることが大切です。職員一人の文章力や反省に頼らず、管理者や関係職種が一緒に内容を確認できる運用を整えましょう。
書き方に迷っている方も、まずは架空の転倒事例をじこボットへ伝えてみてください。起きたことを話し、下書きを確認し、Excelへ出力する流れを体験できます。

編集:
介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト
編集部(主任介護支援専門員)
ケアマネジャーや地域包括支援センターなど相談業務に携わった経験や多職種連携スキルをもとに、介護福祉専門のウェブ制作ウェルコネクトを設立。情報発信と介護事業者に特化したウェブ制作サービスとAIを活用した業務改善提案を行う。





