2027年介護報酬改定はどうなる?見えてきた5つの方向性と事業所への影響

2027年介護報酬改定、5つの方向性

2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けた議論が本格化しています。

2026年9月30日に開催された第268回社会保障審議会・介護給付費分科会では、「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」が示されました。

ここで、2027年度改定に向けた大きな方向性が5つに整理されています。

※ 厚生労働省:「令和9年度介護報酬に向けた基本的な視点(案)」より

現時点では、具体的な単位数や新しい加算・減算などが決まったわけではありません。

ただ、2026年4月以降、介護給付費分科会ではサービス別・横断的な課題について9回にわたり議論が行われ、さらに9月には関係団体との意見交換会が3回開催されています。その積み重ねを踏まえてまとめられたのが、今回の「基本的な視点(案)」です。

つまり、今後の細かな報酬設定はこれからであっても、「国が2027年度改定でどこを重視しようとしているのか」はかなり見える段階まで来ています。

今回の記事では、介護給付費分科会などで示されている資料をもとに、2027年度介護報酬改定の現在地と、介護事業所が今から考えておきたいポイントを整理します。

2027年介護報酬改定、現時点で見えてきた5つの方向性

介護報酬改定の方向性は5つの柱に

第268回介護給付費分科会で示された基本的な視点は、次の5つです。

  1. 物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善
  2. 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
  3. 地域包括ケアシステムの深化
  4. 職場環境の改善と生産性の向上を通じたサービスの質の向上及び介護人材の確保
  5. 制度の安定性・持続可能性の確保

単に介護報酬を引き上げる、あるいは新しい加算を作るという話ではありません。

2040年を見据えた人口構造の変化、人材不足、事業所経営、地域差、ICT・AIの活用、医療介護連携などを含めて、介護サービスの提供体制そのものをどう維持していくのかが大きなテーマになっています。

1.物価・賃金上昇への対応と処遇改善

最初に掲げられているのが、介護事業所の経営と職員の処遇です。

基本的な視点(案)では、物価や賃金の上昇が続く一方、介護サービスは公定価格であるため、一般企業のように事業者の判断だけで価格を引き上げることが難しい点が改めて示されています。

さらに厚生労働省は、令和7年度介護事業経営概況調査について「全サービスにおける赤字事業者の割合は約4割」と記載しています。

2026年度には、2027年度改定を待たずに期中の介護報酬改定が実施されました。

改定率は+2.03%。このうち処遇改善分が+1.95%で、介護従事者を対象とした月1万円相当の賃上げ、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員にはさらに月0.7万円相当を上乗せする仕組みが導入されています。

※参照:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」より

それでも2027年度改定の基本的な視点で、改めて「物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善」が第1の視点として掲げられました。

具体的には、

「物価や賃金の上昇等を介護報酬に適切に反映」

するとともに、他職種と遜色のない処遇改善を実現し、人材の定着・離職防止につなげる必要性が示されています。

したがって、2027年度改定でも介護職員の処遇改善は大きな論点になる可能性が高いでしょう。

ただし、後述するように財源の制約も同時に示されているため、「介護報酬全体が一律に大きく引き上げられる」と考えるのはまだ早い段階です。

2.全国一律ではなく「地域によって介護の形が変わる」

地域によって異なる介護の形

今回の改定で特に重要なのが、人口減少とサービス需要の地域差です。

2027年度から始まる第10期介護保険事業計画は、2040年を強く意識したものになります。

2040年に向けて65歳以上人口がピークを迎える一方、医療と介護の複合ニーズを抱えやすい85歳以上人口は増加します。

しかも、その変化は全国一様ではありません。

都市部では今後も介護サービス需要が増える地域がある一方、すでに高齢者人口や介護サービス需要そのものが減少し始めている地域もあります。

※参照:厚生労働省「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」より

7月23日の第261回介護給付費分科会では、この問題だけをテーマとして「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」が議論されました。

資料を見ると、全国の在宅サービス利用者数は2040年ごろにピークを迎える見込みですが、保険者単位では大きく状況が異なります。

在宅サービスについては、2024年までにすでに313保険者、全体の19.9%が利用者数のピークを迎えています。2035年までには906保険者、57.6%がピークを迎える見込みです。

一方で、都市部を中心に2040年以降も利用者数が増え続ける地域があります。

つまり今後は、

「全国共通の介護サービスモデルをそのまま維持する」

という考え方だけでは対応できません。

中山間・人口減少地域、大都市部、それ以外の一般市など、それぞれの地域事情に応じたサービス提供体制が求められます。

2026年に成立した社会福祉法等の改正では、中山間・人口減少地域を対象として「特定地域サービス」なども創設されました。

特定地域サービスでは、地域の実情に応じて人員配置基準を柔軟化したり、訪問介護などで従来の出来高報酬とは異なる月単位の包括的な評価を選択できる仕組みなどが想定されています。詳細な人員配置基準や報酬については、介護給付費分科会で引き続き検討されることになります。

2027年度改定は「どのサービスに何単位付くのか」だけでなく、地域によって介護サービスを維持する方法そのものを変えていく改定になる可能性があります。

3.地域包括ケアは「医療介護連携」からさらに広がる

3つ目は、地域包括ケアシステムの深化です。

介護給付費分科会では、今後、

・医療と介護の複合ニーズを持つ高齢者
・認知症の高齢者
・独居高齢者

が増えることを前提として議論が行われています。

基本的な視点(案)では、医療ニーズが高い高齢者や看取りへの対応を含む医療・介護連携、生活期のリハビリテーション、災害や感染症への業務継続、高齢者虐待防止などが挙げられています。

さらに特徴的なのは、介護事業所や医療機関だけで地域包括ケアを構築する考え方ではなくなっていることです。

生活支援、権利擁護、地域活動、民間サービスなど「地域の多様な主体・資源」と連携しながら、高齢者の生活全体を支えることが示されています。

認知症についても、単に介護サービスを提供するのではなく、認知症になっても地域とのつながりや社会参加を継続できる環境を整えることが示されています。

介護事業所にとっては、自事業所の中だけでサービスを完結させるのではなく、

「地域の中で自分たちは何を担う事業所なのか」

をより明確にしていく必要があります。

有料老人ホームについては、今回の基本的な視点の中で「サービスの質及び運営の透明性確保」も明記されています。

2026年成立の制度改正では、中重度等の要介護者が入居する有料老人ホームについて登録制度が導入されるなど、高齢者向け住まいの透明性を高める方向もすでに具体化しています。

また、サービスの質についてはLIFEの一層の活用などを通じ、科学的介護をさらに進める方向が示されています。

2027年度改定では、サービスを提供した量だけではなく、「どのような介護を行い、どのような成果につながったのか」という視点も引き続き重要になりそうです。

4.AI・ICTによる生産性向上は施設だけの話ではなくなる

AI・ICTは業務改善につながるかが重要

4つ目は、職場環境の改善と生産性向上です。

介護人材不足が続く中、単純に人を増やすだけではサービス提供体制を維持できません。

8月28日の第263回介護給付費分科会では、「介護人材確保に向けた処遇改善等」と「介護現場の生産性向上等の推進」がそれぞれ独立した資料として議論されました。

資料では、介護関係職種の有効求人倍率が依然として全職業より高い水準で推移していることも示されています。

こうした状況で厚生労働省が進めているのが、テクノロジーによる業務改善です。

2027年度改定の基本的な視点では、

「居宅系サービスも含めたAI等の介護テクノロジーの活用」

が明記されました。

ここはかなり重要です。

これまで介護ロボットや見守りセンサーなどの生産性向上施策は、施設系サービスのイメージが強いものでした。

しかし今後は、訪問介護、通所介護、居宅介護支援などを含めた在宅サービスでも、テクノロジーを使って間接業務を減らす方向が強くなっています。

第263回の資料では、介護記録ソフトやケアプランデータ連携システムに加え、生成AIを活用して計画書やサービス担当者会議の議事録などの原案を作成することも、業務効率化につながる例として紹介されています。

一方で、AIについては信頼性やセキュリティなどの課題があるため、実証を通じた効果検証や利用上の留意点を整理する必要性も示されています。

※参照:厚生労働省「介護現場の生産性向上等の推進」より

重要なのは、単に「AIを導入した」「介護ロボットを買った」ことが評価される方向ではないという点です。

2024年度に創設された生産性向上推進体制加算でも、テクノロジー導入だけではなく、業務改善を継続し、その効果をデータで確認する仕組みが設けられています。 厚生労働省

2027年度改定でも、

テクノロジーを導入する
↓
職員の負担を減らす
↓
生み出した時間を利用者への直接的なケアに充てる
↓
サービスの質を高める

という考え方が基本になります。

生産性向上は単なる「人減らし」ではなく、限られた人材を直接的なケアに集中させるための手段として位置づけられています。

5.報酬アップだけでなく「重点化・適正化」も進む

ここは忘れてはいけないポイントです。

2027年度改定では処遇改善や物価高への対応が大きなテーマになる一方、「制度の安定性・持続可能性の確保」も5つの基本的な視点の一つです。

介護保険は、保険料、公費、利用者負担によって支えられています。

特に現役世代を中心に保険料負担の増加への懸念があることから、基本的な視点(案)では、

・限られた財源の有効活用
・報酬評価の適正化、重点化
・報酬体系の整理、簡素化

を進める方向が示されています。

したがって、

「物価高だから介護報酬全体が上がる」

という単純な改定ではないでしょう。

政策的に必要性が高い領域には報酬を重点的に配分し、その一方で、サービス提供実態や利用者像に応じて既存の評価を見直す。

そうしたメリハリのある改定になる可能性があります。

今回の改定は「報酬単価」だけを見ていてはいけない

ここまでの議論を見ると、2027年度改定には共通する流れがあります。

それは、介護サービスを「何単位で提供するか」だけではなく、「限られた人材と地域資源の中で、どう持続可能な事業所をつくるか」という視点です。

改定の方向性介護事業所にとっての課題
処遇改善採用・定着、職場環境の改善
地域ごとのサービス体制地域ニーズに合わせた事業展開
地域包括ケア医療・介護・地域との連携
生産性向上ICT・AI活用、業務改善
持続可能性経営効率、サービスの質、役割の明確化

これは制度改定への対応だけで終わる話ではありません。

「働く人から選ばれる事業所であるか」

「地域の中で必要とされる役割を担えているか」

「限られた人員でサービスの質を維持できる仕組みがあるか」

といった、事業所経営そのものが問われています。

介護事業所が2027年改定に向けて今から準備できること

具体的な加算や単位数が決定する前でも、準備できることはあります。

まず人材確保です。

2027年度改定を待って給与だけを変更するのではなく、研修体制、資格取得支援、ICTによる負担軽減、休暇、キャリア形成など、職員が働き続けられる環境そのものを整えておく必要があります。

次に地域との関係です。

特に人口減少地域では、ひとつの事業所ですべてを抱えるのではなく、他事業所や医療機関、地域資源との連携や協働化がより重要になります。

都市部でも、介護需要が増える中で「どの利用者に、どのサービスを提供する事業所なのか」を明確にしていかなければなりません。

そしてもうひとつが生産性向上です。

ICTやAIは、導入すること自体が目的ではありません。

記録、情報共有、請求、会議、報告書作成などの間接業務を減らし、職員が利用者と向き合う時間を確保する。そのためにどの業務を変えるのかを考えることが重要です。

2027年度改定直前になって制度に合わせるよりも、現在の業務や職場環境を一度確認しておいた方が対応できる幅は大きくなります。

これからは「取り組んでいることを伝える力」も重要になる

取り組みを伝える力が求められる

ここで少し視点を変えてみます。

介護事業所では、実はさまざまな取り組みが行われています。

職員研修を実施している。

資格取得を支援している。

ICTを導入して記録時間を減らしている。

地域の行事に参加している。

医療機関や他の介護事業所と連携している。

事故防止や感染症対策にも取り組んでいる。

ところが、それを外部から知る方法がほとんどない事業所も少なくありません。

求職者がホームページを見ても、掲載されているのは給与、勤務時間、休日だけ。

利用者や家族が見ても、住所、電話番号、サービス内容だけ。

地域のケアマネジャーや医療機関から見ても、その事業所が何を得意としているのか分からない。

これでは、せっかくの取り組みが事業所の価値として伝わりません。

実は「取り組みの見える化」は、すでに介護報酬制度の中にも入っています。

2026年度の介護職員等処遇改善加算では、一部の加算区分について職場環境等要件の取り組みを見える化することが求められており、方法として「介護サービス情報公表システム」への掲載に加え、「自社のホームページへの掲載」も明示されています。

もちろん、これは「2027年度から介護事業所にホームページが義務化される」という意味ではありません。

そこは分けて考える必要があります。

ただ、制度全体を眺めると、サービスの質、職場環境、生産性向上、地域連携、運営の透明性など、事業所の中で行っていることを外部から分かる形にしていく方向は明確になっています。

そして制度上の公表だけでなく、採用や利用者獲得、地域連携という事業所経営の面でも、「何をしている事業所なのか」を伝える重要性は今後さらに高まるでしょう。

2027年介護報酬改定を待たず、情報発信も見直しておく

介護事業所のホームページというと、以前は「事業所名、サービス内容、住所、電話番号が掲載されていればいい」と考えられることもありました。

しかし、これからはそれだけでは十分とは言えません。

例えば採用であれば、募集要項だけでなく、

どのような職員が働いているのか。

どのような研修を行っているのか。

ICTをどのように活用しているのか。

職員の負担を減らすために何をしているのか。

こうした情報の方が、求職者にとって職場を判断する材料になります。

利用者や家族、地域の関係者に対しても同じです。

どのような利用者への対応を得意としているのか。

医療機関や地域とどのように連携しているのか。

認知症、看取り、リハビリテーションなどにどう取り組んでいるのか。

地域でどのような活動をしているのか。

こうした情報を継続的に発信できる場所として、ホームページの役割は大きくなっています。

一度、自事業所のホームページを利用者、家族、求職者、ケアマネジャーの立場で見てみてください。

数年前から情報が更新されていない。

求人ページには募集要項しかない。

職員や職場の様子が分からない。

事業所の特徴を説明するページがない。

地域で行っている活動が掲載されていない。

ICTや職場環境改善に取り組んでいても、その情報がない。

こうした状態であれば、2027年度介護報酬改定をひとつのきっかけとして、情報発信のあり方そのものを見直してもよいでしょう。

介護報酬改定への対応というと、どうしても新しい単位数や加算要件に目が向きます。

しかし今回示されている方向性を見ると、その先にあるのは「地域から必要とされ、人材を確保し、質の高いサービスを継続できる事業所をどうつくるか」という問題です。

制度が決まってから対応するのではなく、自分たちがどんな介護を行い、どんな職場をつくり、地域でどんな役割を担っているのか。

2027年に向けて、一度言葉にしてみることから始めてはいかがでしょうか。

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編集:
介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト
編集部(主任介護支援専門員)

ケアマネジャーや地域包括支援センターなど相談業務に携わった経験や多職種連携スキルをもとに、介護福祉専門のウェブ制作ウェルコネクトを設立。情報発信と介護事業者に特化したウェブ制作サービスとAIを活用した業務改善提案を行う。

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