訪問看護ステーションを立ち上げたものの、思うように利用者が増えない。
居宅介護支援事業所を回って営業している。病院にも挨拶に行っている。パンフレットも配っている。それでも、なかなか新規の依頼につながらない。
特に少人数でスタートした訪問看護ステーションにとって、「どうやって地域のケアマネジャーから選んでもらうか」は、経営を左右する大きな問題です。
では、そもそもケアマネジャーは何を見て訪問看護ステーションを選んでいるのでしょうか。
この疑問について、かなり興味深い調査があります。
2024年に『日本医療経営学会誌』へ掲載された、座光寺佑樹氏の「小規模訪問看護ステーションの競争戦略に関する一考察~ケアマネジャーへのアンケート調査より~」です。
この研究では、訪問看護を利用しているケースを担当するケアマネジャーを対象に、「訪問看護ステーションを選ぶ際に何を重視しているのか」が調査されています。調査は2022年2月から4月に実施され、無作為抽出した200事業所に協力を依頼。最終的な回答者は44人、回収率は27.0%でした。研究上の「小規模」は、常勤換算2.5人以上3人未満の看護職員が在籍するステーションと定義されています。
サンプル数自体は限られるため、この結果だけで「全国のケアマネは全員こう考えている」と一般化することはできません。それでも、小規模訪問看護が「どこで戦うべきなのか」を考えるうえで、非常に示唆の多い結果が出ています。
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ケアマネが重視していたのは「規模」ではなかった
まず注目したいのが、訪問看護ステーションを選ぶ際にケアマネジャーが重視していた項目です。

全回答者のうち、「重視する」と答えた割合が高かったのは、「連携のしやすさ」88.6%、「繋がりやすさ」81.8%、「緊急訪問加算」70.5%、「スタッフ人柄」68.2%でした。
一方、「法人の規模」を重視するとした人は9.1%。「事業所知名度」はわずか4.5%でした。
ここは、小規模訪問看護にとってかなり重要なポイントではないでしょうか。
大きな法人だから選ばれる。
長く運営していて有名だから選ばれる。
少なくとも、この調査ではそうした傾向は強くありませんでした。
むしろケアマネジャーが見ているのは、
「スムーズに連携できるか」
「連絡がつながりやすいか」
「急なときに対応してもらえるか」
「信頼できる人なのか」
という、日々の支援に直結する部分です。
著者も、法人規模や事業所の知名度について、他の条件と比較して重視する割合が極めて低く、ケアマネジャーに対する差別化としての影響力は低いと考察しています。
つまり、小規模だからという理由だけで、最初から勝負が決まっているわけではないのです。
小規模になるほど問われる「その看護師は何ができるのか」
さらに興味深い結果があります。
回答した44人のうち、主な取引先が小規模訪問看護ステーションだったケアマネジャーは10人でした。
その10人を見ると、「連携のしやすさ」を90.0%、「繋がりやすさ」を80.0%が重視していました。
そして「スキルや経験」を重視すると回答した割合も80.0%でした。
全体では「スキルや経験」を重視した割合は47.7%です。中規模を主な取引先とするグループでは42.3%、大規模では25.0%でした。そして、規模別の比較で統計的な有意差が確認されたのは、この「スキルや経験」の項目だけでした(p=0.046)。

ここは、小規模訪看の戦い方を考えるうえで非常に重要です。
人数が少ないからこそ、
「そこにいる看護師は、何ができる人なのか」
が見られている可能性があります。
実際、自由記述を分析した結果でも、「専門的なスキル」「経験」「連絡の繋がりやすさ」「連携の取りやすさ」「緊急時訪問看護加算取得」という要素が、小規模なステーションに求められる条件として抽出されています。専門性については、精神疾患への対応など、他のステーションとは異なる強みを求める記述も確認されています。
著者はこれらの結果から、訪問看護師自身がこれまでの臨床経験を振り返り、自分たちの強みを見つけ、それを打ち出して競合との差別化を図る必要があるとしています。
「うちは何でも対応します」ではなく、
「このケースなら、あの訪看に相談してみよう」
と思い出してもらえる理由を作る。
小規模訪問看護にとって、これはかなり現実的な戦い方だと思います。
ケアマネが欲しいのは「安心して紹介できる」という感覚
ここからは、ケアマネジャーの立場で少し考えてみます。
例えば、退院を3日後に控えた利用者がいるとします。
独居。インスリン管理が必要。認知症も少しある。退院後すぐに訪問看護を入れたい。
こんなケースを担当したとき、ケアマネジャーが最初に知りたいのは、その訪問看護ステーションの立派な理念ではないはずです。
「このケースは受けてもらえるのか」
「いつから入れるのか」
「インスリン管理に対応できるのか」
「認知症のある方への経験はあるのか」
「状態が変わったときに相談できるのか」
「ちゃんと連絡がつくのか」
こうしたことです。
そして、一度依頼したあとに連絡が取れない、報告がない、状態変化を共有してもらえないとなれば、その後の紹介にも影響します。

逆に、
「あそこに相談すると返事が早い」
「管理者さんに話せば状況を分かってくれる」
「この疾患ならあの看護師さんが詳しい」
という経験が積み重なれば、次のケースでも思い出してもらいやすくなります。
今回の研究でも、著者は「連携の取りやすさ」「連絡の繋がりやすさ」「緊急時の対応」を、規模にかかわらず求められる基本的な条件と位置づけ、そのうえで小規模の場合には「専門的なスキルや経験等の経歴」が加わるという構造を示しています。
言い換えれば、小規模訪看が最初に目指すべきなのは、
「大きなステーションに見せること」ではなく、「安心して紹介できるステーションになること」
なのかもしれません。
小規模訪看には「小さいからできること」もある
もちろん、小規模であることには厳しさがあります。
少人数で24時間対応を続ける負担は大きく、一人の退職や休職が経営や勤務体制に与える影響も小さくありません。
今回の論文でも、緊急時などのイレギュラーな対応について、小規模ステーション同士や大規模ステーションとの連携によってフォローし合える体制づくりの必要性が指摘されています。
つまり、「小規模だからフットワークが軽い」とポジティブな言葉だけで片付けられる問題ではありません。
一方で、少人数だからこそできることもあります。
管理者と現場との距離が近い。スタッフ同士でケースを共有しやすい。ケアマネジャーから「あの看護師さんに相談したい」と個人を覚えてもらいやすい。
論文でも、小規模になるほど個々との関わりが密になり、個人の信用やケアマネジャーとの信頼関係が重要になる可能性が考察されています。
だからこそ、小規模訪看は「人数が少ない」という事実を隠すより、
その少人数の中に、どんな経験と専門性を持った人がいるのか。どんな連携ができるのか。
を示していく方が重要ではないでしょうか。
そして、その「選ばれる理由」は相手に伝わっているか
ここまでが、研究から読み取れる話です。
ここからは、この結果を訪問看護ステーションのホームページという視点に置き換えて考えてみます。
例えば、あなたのステーションに、
「急性期病院で循環器を10年以上経験した看護師」
「精神科病院で長く勤務してきた看護師」
「看取りやターミナルケアを数多く経験してきた管理者」
がいたとします。
それは、地域のケアマネジャーに伝わっているでしょうか。
ホームページを開いて、
「住み慣れた地域で、その人らしい生活を支援します」
という理念だけが書いてあったとしたら、その強みはほとんど伝わりません。
訪問看護としては大切な理念です。でも、それだけではケアマネジャーが目の前のケースを「ここに頼めるか」を判断できないからです。
ホームページに必要なのは、事業所をきれいに見せることだけではありません。
紹介する側が判断するための材料を置くことです。
具体的には、現在の受入状況、対応地域、対応できる疾患や医療処置、得意としているケース、看取りや精神科への対応、24時間対応体制、スタッフそれぞれの臨床経験や得意分野、相談方法、初回訪問までの流れなどです。
大切なのは、
「電話してみないと分からないこと」を減らすこと。
もちろん、すべてのケースについてWebだけで受入可否を判断することはできません。
だからこそ最後には、「このケースはどうだろう」と気軽に確認できる連絡先や相談導線が必要になります。
「スタッフ紹介」を採用ページだけに置いていませんか?
特に小規模訪看では、スタッフ紹介の意味を考え直してもよいと思います。
よくある訪問看護サイトでは、
「管理者 ○○です。地域の皆さまに寄り添った看護を目指します」
程度の紹介で終わっています。
しかし、今回の調査で小規模ステーションに対して「スキルや経験」が重視されていたことを考えると、もっと具体的でいいはずです。
例えば、
「急性期病院の脳神経外科で12年勤務」
「精神科病棟・精神科訪問看護を経験」
「がん終末期・看取りの訪問を多く担当」
「認知症の本人支援だけでなく家族支援を得意としている」
といった情報です。
資格名をたくさん並べることが目的ではありません。
「この利用者を任せられそう」と想像できる情報を出すこと。
小規模だからこそ、「誰がいるのか」がそのままステーションの強みになります。
ケアマネジャー向けのページを用意してもいい
訪問看護のホームページというと、利用者・家族向けに作られているものがほとんどです。
しかし、訪問看護の利用につながる経路を考えれば、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカー、退院支援部門、医師など、紹介する側も重要な閲覧者です。
それなら最初から、
「ケアマネジャー・医療機関の皆さまへ」
というページを作ってもいい。
そこに、次のような情報をまとめておけば、紹介先を探している人が短時間で確認できます。
- 現在の新規受入状況
- 対応可能地域と訪問可能な曜日・時間
- 得意な疾患、医療処置、利用者像
- 24時間・緊急時の対応体制
- スタッフの臨床経験・専門性
- 相談から訪問開始までの流れ
- 相談窓口と連絡方法
これは単なるSEO対策でも、見栄えのためのコンテンツでもありません。
ケアマネジャーの「紹介判断」を助けるための情報設計です。
ホームページだけでは「連携しやすい訪看」にはなれない

ここは重要なので、あえて書いておきたいと思います。
ホームページに「連携を大切にしています」と書いただけでは、連携しやすいステーションにはなりません。
電話に出られなかったときの折り返し。担当者不在時の情報共有。ケアマネジャーへの報告。急変時の対応。相談への返答速度。
こうした日々の運営があって、初めて「連携しやすい」という評価になります。
今回の研究が示しているのも、Webサイトの重要性ではありません。
ケアマネジャーが訪問看護ステーションを選ぶときに、連携、連絡、緊急対応、そして小規模では専門的なスキルや経験を重視している可能性がある、ということです。
ホームページができるのは、その実態を相手に分かる形で伝えることです。
だから順番としては、
強いホームページを作ることが先ではありません。
「なぜ自分たちが選ばれるのか」をつくることが先です。
そのうえで、その理由がまだ自分たちを知らないケアマネジャーにも伝わるようにホームページを設計する。
ここまでできて、ようやくWebが営業活動を支えてくれます。
小規模訪問看護は、「大きさ」ではなく「選ばれる理由」で戦う
スタッフを増やしたい。でも採用できない。
利用者を増やしたい。でも紹介が増えない。
営業に行きたい。でも日々の訪問で時間がない。
小規模訪問看護には、簡単には解決できない問題がいくつもあります。
だからこそ、大手と同じ戦い方をする必要はありません。
今回の調査では、法人規模や事業所の知名度よりも、連携のしやすさ、繋がりやすさ、緊急時の対応などが高い割合で重視されていました。そして小規模ステーションでは、それらに加えて「スキルや経験」が重要な判断材料になっていることが示唆されています。
ならば、考えるべきことはシンプルです。
自分たちには何ができるのか。
どんなケースなら力になれるのか。
ケアマネジャーにとって相談しやすい存在になれているか。
そして、それが地域にきちんと伝わっているか。
小規模であることそのものは、変えられないかもしれません。
でも、
「このケースなら、あの訪看に聞いてみよう」
と思い出してもらえる理由は作れます。
そしてホームページは、その理由を24時間伝え続けることができます。
小規模訪問看護が生き残るために必要なのは、「大きく見せること」ではありません。
ケアマネジャーが何を求めているのかを知り、その期待に応えられる事業所をつくり、それをきちんと伝えること。
そこから、小規模訪看の戦い方を考えてみてはいかがでしょうか。

編集:
介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト
編集部(主任介護支援専門員)
ケアマネジャーや地域包括支援センターなど相談業務に携わった経験や多職種連携スキルをもとに、介護福祉専門のウェブ制作ウェルコネクトを設立。情報発信と介護事業者に特化したウェブ制作サービスとAIを活用した業務改善提案を行う。



