ケアマネ向けページを作る?ターゲットに合わせた情報発信の工夫

ターゲット特化ページ

介護事業所のホームページ、多くは「利用者本人や家族に向けた情報」ばかりになっていませんか?

ターゲットに合わせた情報発信

もちろん、利用者や家族は最も大切な閲覧者です。料金やサービス内容、施設の雰囲気をわかりやすく伝えることは基本中の基本です。

しかし実際にサービス利用の決定を大きく左右するのは、家族だけではありません。
ケアマネジャーが「この事業所を紹介しよう」と思うかどうか、病院の地域連携室やMSW(医療ソーシャルワーカー)が「退院先として安心できる」と判断するかどうか──ここが利用につながるかどうかの分岐点になります。

さらに、スタッフ採用を考えるなら、求職者も重要なターゲットです。

つまり、介護事業所のホームページには「複数の読み手」が存在するのです。
それなのに「誰にでも当たり障りなく」作ったページは、結局のところ誰の心にも刺さらない。

では、どうすればよいのでしょうか。
答えはシンプルです。ターゲットごとにメリットになる情報を尖らせて、ページを用意すること。つまり、「ターゲット特化ページ」を追加することです。

今回は、ターゲットを意識して介護事業所が自社ホームページを見直すポイントを解説していきます。

本人家族向けページ(基本ベース)

本人・家族に向けた情報発信

介護事業所のホームページは、まず 利用者本人・家族に向けて設計することが基本です。
なぜなら、最終的にサービスを利用するのは本人であり、費用を負担し、生活の変化を受け止めるのも本人と家族だからです。

今は、サービスを受ける家族だけでなく、本人自身がスマホで検索して施設やサービスを比較することも珍しくありません。
つまり、本人家族の双方が安心して理解できる情報を提示することが、ホームページの第一の役割になります。


本人家族が知りたいこと

  • 料金
    • 「月額いくらか」「初期費用は必要か」といった負担感が一番の関心事
    • 複雑な単位数や加算ではなく、総額がどれくらいになるかを示す
    • 施設であれば食費や居住費、減免などについての情報も重要
    • 例:「介護度3・1割負担の場合で月額約○円(食費・居住費込み)」
  • 施設やサービスの雰囲気
    • 写真や動画を使って「どんな場所で、どんな人と過ごすのか」を伝える
    • 建物だけでなく、利用者やスタッフの日常の様子が安心材料になる
  • 利用の流れ
    • 初めて介護サービスを検討する本人家族にとって、手続きは不安の種
    • 「問い合わせ → 見学 → 契約 → 利用開始」といった流れを図や箇条書きで示すことでハードルを下げられる
  • 利用者や家族の声
    • 第三者の体験談は、どんな説明よりも信頼につながる
    • 「安心して任せられました」「スタッフが親切でした」といった声を短く載せるだけでも効果的

専門用語の扱い方

本人家族にとっては、介護の専門用語はしばしば理解の壁になります。
「ADL」「インフォーマルサービス」「アセスメント」など、業界では当然の言葉でも、初めて介護に向き合う人には意味が分かりません。

使う場合には必ず補足を添えることが必要です。

  • 「ADL(日常生活動作=食事や着替え、トイレなど)」
  • 「インフォーマルサービス(介護保険外の支援や地域の助け合い)」
  • 「アセスメント(専門職による客観的な視点からの課題・分析・評価)」

たった一言の説明で「わからない不安」を「理解できる安心」に変えられます。

これはもちろん利用者本人や家族、一般の方に対しても有効なのですが、意外と専門職も理解していそうで理解できていないことや認識に微妙なズレがあることもあります。たとえば、同じ「ADL」でも、「できるADL」を指しているのか「しているADL」を指しているのかで、ケアの方針は大きく異なります。「インフォーマルサービス」でも、介護保険サービス以外をすべてインフォーマルと総称しているのか、民間企業などもフォーマル(組織・団体)ととらえてあくまで非営利・非組織の支援のみをインフォーマルととらえるか、広義と狭義では大きく異なります。

専門職に対しても、微妙な見解のずれが生じやすいので、専門用語には定義や補足があると認識のずれを回避することができるので、効果は大きいです。

AI対策にも、用語の意味を定義し、明確化することはとても効果的なのでぜひ意識しましょう。


理念や想いを伝える

本人家族が本当に知りたいのは「料金」や「手続き」だけではありません。

  • なぜこのようなリハビリに取り組んでいるのか
  • なぜこのようなレクリエーションを大事にしているのか

こうした背景にある事業所の理念やケアへの想いを知ることで、本人家族は「ここなら自分たちに合いそうだ」と納得できます。また、ケアの結果が思った成果を上げられなかったとしてもそのプロセスを含めて想いを理解することができます。

ホームページは、紙のパンフレット以上に表現の幅があります。

  • 写真や動画で日常の様子を伝える
  • スタッフの声を載せる
  • 活動のレポートをブログ形式で紹介する

こうした多様な方法で理念を表現することができ、それが本人家族との信頼関係の第一歩になります。

ケアマネ向けページ

ケアマネ向けの情報発信

介護サービスの利用を決めるうえで、本人家族だけでなく ケアマネジャーの判断は非常に大きな影響を持ちます。
実際にケアプランを作成し、利用できるサービスを組み合わせるのはケアマネジャーです。
そのため、ケアマネにとって「スムーズな連携ができるか」「プランに組み込みやすいかどうか」が、紹介の大きな分岐点となります。


ケアマネが求める情報

  • 算定している加算や単位数
    • 家族には「月額いくらか」を示すことが大切ですが、ケアマネは「単位数」で考えます。
    • 算定している加算を明示しておくことで、負担限度額の管理なども含め、ケアプラン立案がしやすくなります。
  • 受け入れ条件や利用者の平均介護度
    • 介護度、医療的ケアの範囲、夜間の対応など
    • 利用者の平均介護度を示すだけでも、利用者の状況をある程度推測することができます
    • 「この事業所に紹介できるか」「担当の利用者に合うかどうか」の判断に直結する情報です。
  • 情報連携の方法
    • FAX、メール、ケアプラン連携システムなど、どの手段が使えるのか
    • 「情報のやり取りがスムーズかどうか」は、ケアマネにとって大きな安心材料になります。
  • 連絡窓口の明記
    • 緊急時の連絡窓口(24時間対応の訪問看護など)や、連絡可能時間など、窓口情報を分かりやすく提示
    • 迷わず連絡できる仕組みが、信頼につながります。
  • 資料の提供
    • 申込書・見学依頼書などをダウンロードできるようにする
    • 逆にサービス利用の際にケアマネから提供してほしい書類なども明記しておく
  • そのほか、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームであれば、ケアマネがそのまま担当を継続することができるのか、引き継ぐことになるのかなど、そういったケアマネの動きに直接関連する情報もクローズドになっている場合が多いです。これらをしっかり開示することで、ケアマネは次の動きを予測しながら行動し、利用者にも提案することができます。

かくいう私もケアマネの仕事や地域包括の仕事をしていたので、実際に利用者さんに事業所を紹介するとなると情報収集にホームページを活用させていただくわけです。限度額厳しいかな~、とか思ったりとかするわけで、加算が多くなりそうなところは躊躇することもあります。サービス情報公表の加算取得実績とかも見たりしますが。ただ、その時点で機会損失してしまうのはもったいない話ですよね。
やはり連携するという意味でも、ケアマネ向けの営業チラシを用意するよりも先に、連携用の情報をまとめておくことはやっぱり重要だと思うんですよね。


ケアマネ向けページの工夫

ケアマネにとっても「雰囲気」や「体験談」はとても重要な情報でもあります。
ただ、ケアマネはそれだけではなく、プランに落とし込むための実務的な情報も求められます。

「料金」ではなく「加算や単位数」、「雰囲気」ではなく「受け入れ条件」──
同じ事業所の情報でも、本人家族とケアマネでは求めているものが違います。

つまり、ケアマネにはケアマネ向けに整理された情報を提供することが望ましいということです。つまり、「ケアマネ向けページ」を追加することです。

ホームページにケアマネ向けの1ページを加えるだけで、紹介のしやすさが大きく変わります。
それはつまり、新規利用者の獲得にも直結する工夫とも言えます。

医療機関向けページ(退院支援など)

医療機関向け情報発信

もう一つ見落とされがちなのが、医療機関の相談員や地域連携室を意識したページです。
病院からの退院支援や施設紹介は、医療機関の判断に大きく依存しています。
「この施設なら受け入れてもらえる」と安心できる情報があるかどうかで、紹介の有無が変わってくるのです。

たとえば、介護老人保健施設・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅などの医療依存度の高い方でも受け入れる施設や、看護小規模多機能・訪問診療・訪問看護など、在宅の事業所との連携を取る必要があります。


医療機関が求める情報

  • 受け入れ可能な利用者像
    • 介護度や認知症の進行度、医療依存度など
    • 退院前カンファレンスなどの参加状況
    • 「どこまで受け入れ可能か」を明確にすることで、病院側は紹介しやすくなります。
  • 対応可能な医療処置
    • 胃ろう、吸引、インスリン、在宅酸素、褥瘡ケア、看取り対応など
    • 医療処置の可否は、退院先選びの最大のポイントです。
  • 緊急時の対応体制
    • 夜間や休日にどう対応するのか
    • 「夜間オンコールあり」「緊急時は協力医療機関に搬送」など、明記することで安心感を与えます。
  • 協力医療機関の一覧
    • 協力関係にある病院・診療所を具体的に掲載
    • 医療とのつながりがあることを示すだけで信頼性が高まります。

医療機関向けページの工夫

医療機関が知りたいのは、「この患者さんを安心して紹介できるか」という一点です。
その判断には、家族向けの「料金」や「雰囲気」ではなく、医学的に必要な条件が欠かせません。

受け入れ条件や医療処置の対応範囲をはっきり示すことは、医療機関にとっても、紹介を受ける事業所にとっても双方のリスクを減らすことにつながります。

医療機関としては、せっかく状態を改善して退院した後、早々に状態悪化して再入院するということはどうしても避けたいところです。そのような再入院の事態を避けるためにも、医療的ケアや健康管理を十分提供できる施設・事業所を紹介したい、そんな思いに答えることが必要です。

そのために、医療機関からの退院受け入れを拡大したい事業所・施設は医療機関向けのページを作成しておくことが効果的です。

上記の内容だけでなく、もし可能であれば医療連携によって課題解決した事例や、退院後の状態改善につながった事例、看取りの事例などを掲載していくことで、ケアの質の高さを伝えていくこともできます。

このように、わずか1ページを追加するだけで、地域連携室やMSW(医療ソーシャルワーカー)にとって「頼れる事業所」「安心して任せられる施設」という印象を与え、紹介のチャンスが大きく広がるのです。

採用サイト・求職者向け情報

求職者向け情報

介護事業所にとって、利用者獲得と同じくらい、いや、今はそれ以上重要ともいえるのが 人材の確保 です。
しかし、採用情報を事業所ホームページの片隅に載せるだけでは、求職者の心に届きません。
採用は内容が多岐にわたるため、別立ての採用サイトを用意して、求職者向けに情報量を確保することをおすすめします。


求職者が知りたい情報

  • 現場の雰囲気
    • 写真や動画でスタッフ同士の関わりや利用者とのやり取りを見せる
    • 「人間関係が良さそうか」が応募意欲を左右します
  • スタッフの声
    • 先輩職員のインタビューや座談会形式の記事
    • 「この職場で働いてよかった」と思えるエピソードが効果的
  • 1日の仕事の流れ
    • デイサービス、訪問介護、施設勤務など、それぞれの典型的な一日を紹介
    • 求職者が働く姿を具体的にイメージできます
  • キャリアパス・教育体制
    • 資格取得支援、研修制度、評価や昇進の仕組み
    • 長く働けるかどうかを判断する材料になります
  • 給与・待遇・福利厚生
    • 求職者は最も気にする部分
    • 「介護業界は待遇が厳しい」というイメージを払拭するために丁寧に説明を

採用サイトの工夫

  • 専門職には専門用語を隠す必要はない
    • ケアマネ、看護師、介護福祉士など、専門性を持つ人が読むことが多い
    • 専門用語を自然に使い、現場感をそのまま伝える方がリアルさにつながります
  • 応募導線を明確に
    • 「エントリーフォームはこちら」「見学申し込みはこちら」といったボタンを大きく配置
    • スマホからの応募を意識してシンプルに設計
  • 別サイトにする意味
    • 採用は情報量が多く、一般利用者向けの情報と混在すると見にくくなる
    • 「利用者募集」と「職員募集」は目的がまったく異なるため、分けて構築した方が効果的

採用サイトを整えることは、人材確保だけでなく「この事業所は人を大事にしている」というメッセージにもなります。昔は、「この事業所はいつも人を募集している」「待遇が悪くてすぐ辞めちゃうんじゃないか」という詮索をされることもありましたが、今は全国的に人手不足の状況なので、常に募集をしていたとしても不思議に思われることはありません。
むしろ、人を大事にしている、スタッフの成長を応援する仕組みがある、という姿勢が伝われば、利用者本人家族やケアマネ、医療機関にとってもプラスの印象につながるのです。

まとめ:ターゲットを意識していますか?

ターゲットに合わせた情報発信が必要

もう一度聞きます。皆さんの事業所のホームページ。ターゲットを意識していると言えますか?

介護事業所のホームページは、誰のために作るのかによって、その役割も伝えるべき情報も大きく変わります。

  • 本人家族には、料金や雰囲気、利用の流れといった「安心材料」
  • ケアマネには、加算や単位数、情報連携の方法など「プランに役立つ実務情報」
  • 医療機関には、受け入れ条件や対応可能な医療処置といった「医学的に必要な条件」
  • 求職者には、現場の声やキャリアパスなど「働く姿をイメージできる情報」

ところが、多くの事業所サイトは「みんなに向けて」「当たり障りのない情報」で作られてしまい、結果として誰にとっても物足りないページになりがちです。

大切なのは、ターゲットごとにメリットになる情報を尖らせて用意すること
それによって本人家族には安心が、ケアマネや医療機関には信頼が、そして求職者には応募意欲が生まれます。

あなたの事業所のホームページは、誰にとってのページになっていますか?
改めて「ターゲットを意識できているか」を見直すことが、集客・紹介・採用のすべてにつながる第一歩です。

「そういうこのサイトはどうなんだ。専門用語ばっかり使っているじゃないか。」
とお𠮟りを受けそうですが、あくまでこのサイトの対象は介護事業所の管理者や介護関連の運営法人の方向けに作成しておりますので、介護に関する専門用語はガツガツ使っております。あしからず。
ただ、ウェブ系の用語や、SEOに関する用語などはもうちょっと細かくかみ砕かないと本当に独りよがりになってしまうので気を付けたいなと思っております。深く反省。

介護福祉のウェブ制作ウェルコネクト

編集:
介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト編集部(主任介護支援専門員)

ケアマネジャーや地域包括支援センターなど相談業務に携わった経験や多職種連携スキルをもとに、介護福祉専門のウェブ制作ウェルコネクトを設立。情報発信と介護事業者に特化したウェブ制作サービスとAIを活用した業務改善提案を行う。

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