オンラインモニタリング一部解禁と件数上限緩和。未来のケアマネはどうあるべき?

スマートケアマネ2024。オンラインモニタリング一部解禁で進化するケアマネの進む道

介護報酬改定に関するニュースが次から次へと出てきますが、ちゃんと情報を追っている人の中には既にはらわた煮えくりかえっているという方もいるんじゃないでしょうか。

そう、今回は居宅介護支援の改定議論の状況について解説します。介護報酬改定から未来のケアマネがどうあるべきか、ケアマネ2024の理想像を模索していきます。

ただ、明るい情報なんて少ないので、心臓の弱いケアマネさんは読まない方がいいかもしれない。いや、直視しなくちゃいけない現実なので、ちょっと精神的に落ち着いているときに読んでください。月末でモニタリングに追われているときや給付管理でストレスが溜まっているときに読むのは避けてください!

ということで、本日のレジュメはこんな感じです。

  • オンラインモニタリング一部解禁でどうなるケアマネ業務
  • 担当件数上限緩和案?そもそもケアプランデータ連携システムで業務改善できるの?
  • 居宅介護支援は収支差率+4.9%って、本当?

オンラインモニタリング一部解禁でどうなるケアマネ業務

コロナ禍で訪問すること自体がリスクとされていたため、ケアマネによる月一回定期モニタリング訪問は電話などで代替していいという特例が適用されました。まあ、割愛しますが、これはケアマネにとっても、そして利用者側にとっても「え?これでよくない?」と実感した方が多かったのではないでしょうか。必要なタイミングには訪問して担当者会議などをしているわけですから、月一回の定期訪問でなくても、必要なタイミングで介入できる体制と連絡手段、サービス提供事業所との連携ができていれば問題ないことが明白になりました。

このコロナ対応は廃止となり、月に一回機械的に訪問するモニタリングが再開されましたが、「あのままで誰か困る人いた?」という声も。

そんな中、ようやくオンラインモニタリングが一部解禁されるようになりそうです。

利用者の状態によっては、テレビ電話装置等を活用しつつ、サービス事業所と連携することで、訪問による場合と同水準のモニタリングができたとの結果を踏まえ、引き続き、少なくとも月1回(介護予防支援の場合は3月に1回)の訪問によるモニタリングを原則としつつ、人材の有効活用及びサービス事業所との連携促進によるケアマネジメントの質の向上の観点から、一定の要件を設けた上で、テレビ電話装置等を活用したモニタリングを行うことも可能としてはどうか。具体的には以下の要件を設けてはどうか。

① 利用者の同意を得ること
② サービス担当者会議等において、主治医、サービス事業者等から以下の合意が得られていること
・利用者の状態が安定していること(主治医の所見等も踏まえ、頻繁なプラン変更が想定されない等)
・利用者がテレビ電話装置等を介して意思表示できること(家族のサポートがある場合も含む)
・テレビ電話装置等を活用したモニタリングでは収集できない情報については、他のサービス事業者と
の連携により情報を収集すること(※)
③ 少なくとも2月に1回(介護予防支援の場合は6月に1回)は利用者の居宅を訪問すること

令和5年11月6日 社会保障審議会介護給付費分科会資料

テレビ電話装置ってなんだよ、っていう感じですが、ビデオチャットですね。身近なツールであればLINEのビデオ通話やzoomなどが該当するでしょう。

家族のサポートがなければ難しい家庭も多くなりそうです。LINEのビデオ通話であればだいぶハードルは低くなりそうです。電話でモニタリングした後、
「すいません!ちょっとだけカメラをオンにしてお顔を見せてもらっていいですか!」というケースも増えそうですね。

正直、オンラインモニタリング解禁はケアマネの業務効率化だけでなく、利用者側のメリットも大きいと思います。なので、オンラインモニタリングを進めていくための鍵は、いかにオンラインでつながることによるメリットを利用者側に感じてもらうか、という点になるかと思います。

チャットツールなどオンラインでつながることで、データを通しての受け渡しができたり、電話以外の連絡手段が確保できます。災害時や緊急時の連絡手段として、電話が使えなかったとしても、別のツールでコミュニケーションができることは大きなメリットになるでしょう。

ケアマネの訪問時に、紙媒体で情報を受け取るだけでなく、より早く画像や動画などの情報を受け取ることができます。

このような利用者側のメリットを丁寧に説明していくことで、オンラインモニタリングに賛同して彼ら利用者も増えていくはずです。

その場に訪問しなければ何もできないケアマネを養成したって、もう現場は回らない。今回は二か月に一回とか、主治医が同意しているかいないかとか、そういう条件が付与されましたが、臨時的な対応ではなく恒久的な変更としてオンラインモニタリングが認められたのは、小さいけれど重要な一歩かなと思います。

士業の働き方も大きく変わっているので、ケアマネの働き方も改善していかないといけないですし、人口過疎地や島しょなどの遠隔地のケアマネジメントの可能性を広げるためにも、オンラインモニタリングは今後もルールを緩和していく必要がありますよね。

担当件数上限緩和

担当件数上限についても言及されています。

現在の担当件数の上限はご存じの通り39件が基本です。チャットツールや事務職員配置でプラス5件の上限緩和はありましたが、この担当件数にも変更が。

■ 居宅介護支援事業所を取り巻く環境の変化や逓減制の見直しによるケアマネジメントへの影響に関する調査結果を踏まえ、現行、40件から逓減制が適用される居宅介護支援費(Ⅰ)について、45件から適用することとしてはどうか。
■ また、ケアプランデータ連携システムの活用により、請求業務やケアプランの共有に係るサービス事業者との情報連携が大幅に効率化されることが期待されることから、事務職員の配置に加えてケアプランデータ連携システムの活用による業務効率化を図っている場合においては、逓減制の適用を更に緩和し、50件からとしてはどうか(居宅介護支援費(Ⅱ))。

令和5年11月6日 社会保障審議会介護給付費分科会資料

ついに来ました50件(MAX49件)。10件増えるって結構なものです。別に普通の月だったらなんとか回せるでしょうけれど、5月や年末年始など祝日が多いなど、稼働日数が少ない月にこれを実現するのは相当厳しいでしょう。そして、ケアマネ更新研修がこれに割って入るようなことがあればもう地獄絵図です。

研修の廃止なり弾力化はもちろんだと思いますが、ケアマネ業務や運営基準のハードルを緩和していかなければ、49件持つことは厳しいでしょう(事業所によっては安定している利用者が多く新規もほとんど受けないということであれば別に回せるんでしょうけれど)。

今後はいかに50件をまわしていくか、オンラインモニタリングも含め、計画的にそして事務的・機械的に業務を回していく勇気や社会(行政や医療関係者も含め)の理解も必要になりそうです。

そもそも、

また、ケアプランデータ連携システムの活用により、請求業務やケアプランの共有に係るサービス事業者との情報連携が大幅に効率化されることが期待されることから

令和5年11月6日 社会保障審議会介護給付費分科会資料

っていう意味が分からない。ちゃんと評価しましたか?導入事業所数はどうなっていますか?これですよ。

秋田県38事業所、島根県28事業所、佐賀県33事業所。しかも中身見てみれば同一法人ばかりだし。これで情報連携が効率化されると思いますか?
こんなハリボテを要件に入れていること自体がおかしいですし、審査会のメンバーの皆さんはいったいどんなファンタジーの世界に住んでいるんですか?

ケアプランデータ連携システムの問題は一年以上前にこの記事に書いていますが、まあ予想通りですよね。誰もが思った通りですよ、厚生労働省の皆さんの頭の中だけがお花畑だったということです。

あと、ものすごい気になるのは「ケアマネジャー1人当たりの取扱件数」というけれど、利用者はモノじゃねえよ。利用者だけを扱うんじゃなくて、その家庭や関わる人たちや関連事業所も含めて担当ケースですよ。もう一回言いますよ、利用者さんはモノじゃねえよ。

居宅介護支援の収支差率が改善しているのはなぜ

さて、もうひとつ気になるデータ。

居宅介護支援事業所の収支差率が改善しているそうです。

まさか、そんなわけない。と思う方も多いと思いますが、おそらくこれは実態を反映してはいないでしょう。

このデータの元となった実態調査の回答率を見てみましょう。

令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要(案)

781件です。たった781件で収支が改善しているから、居宅介護支援事業所は儲かっているので、居宅介護支援事業所の処遇改善は必要ないと決めつけているのです。

出さない方もいけないんですけど、実際のところ提出している事業所の多くは大手法人や特定事業所加算をとって、きっちり利益出してやっている所が多いんじゃないかと思います。

居宅介護支援事業所って全国に37,000件あるんですよ?たった781件の平均で3年間の報酬決めていいんですか?サンプル数少なすぎません?

だから、このデータを根拠に儲けている儲けていないっていうのはちょっと乱暴すぎるんじゃないでしょうか。

まとめ

いろいろ文句を言わせてもらいましたが、ケアマネの働き方もアップデートしていかなければいけない、という現実的な問題自体は厚生労働省も誰もが認識でいるのかと思います。このままじゃ介護保険制度自体を保つことができなくなるという危機感をひしひし感じます。これまでもケアマネ不足やケアマネ高齢化問題についてはこのブログを通してお伝えしている通りですので、お時間がる方はご覧ください。

まずは書類の削減・運営基準の緩和・ローカルルールの撤廃を進めてもらいたいですね。

いずれにしても、ケアマネの業務にICT活用は待ったなし。ケアマネも新しいケアマネ像にシフトしていくことが必要です。

当然のようですが、サービス事業所もICTツールの活用を進めることが重要ですね。どの場面でどのツールを使うのかという選択が適切にできれば、ICTへの大きな投資をしなくてもケアマネからの信頼を勝ち得ることはできます。営業にはメールを使うか、実際会って話をするか、それともチャットか。メールをするにしても、テキストだけで伝えるか、動画で伝えるか、自社サイトへのリンクで伝えるか。いろんな手段があると思います。ウェブサイトは情報発信・コミュニケーションのための重要なツールです。

ウェブサイトを作りたい、リニューアルしたいという方はぜひケアマネの気持ちがわかる主任ケアマネ有資格デザイナーがウェブサイトを作るウェルコネクトが相談承ります(宣伝かよ)。

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