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介護職員の研修準備の負担をどう減らすか
介護保険事業所において職員研修は、事業の信頼性やサービス品質を担保するために欠かせない取り組みです。特に、業務継続計画(BCP)、ハラスメント防止、虐待防止、認知症ケアといった分野は、介護保険法や関連法規によって実施が義務付けられており、どの事業所も必ず対応しなければなりません。
しかし、その研修を実施するにあたっては「担当者の準備負担が大きすぎる」という共通の悩みがあります。

例えば、厚生労働省が発行している研修用マニュアルや手引きは数十~数百ページに及ぶものがほとんどです。これを担当者が読み込み、要点を整理し、スライド資料にまとめ、さらに発表原稿を用意して当日の進行まで担うとなると、数時間〜数日単位の時間が必要になります。介護現場は慢性的な人員不足の中で日々のケア業務に追われており、こうした負担を軽くこなせる余裕はほとんどありません。
さらに、担当者の力量によって研修内容に差が出てしまう問題もあります。ある年は分かりやすくまとまった研修ができても、翌年は別の担当者になり「ただ資料を読み上げるだけの研修」に戻ってしまうことも珍しくありません。このような状況では、せっかくの研修が形骸化し、職員にとって「ただ義務だから受けるもの」という意識に留まってしまいます。
一方で、研修を形だけで済ませてしまうと、実際の業務現場で事故やトラブルが発生した際に「研修はしていたが、現場には浸透していなかった」と責任を問われるリスクがあります。BCPや虐待防止などは、利用者の命や尊厳を守るための根幹に関わるテーマであり、単なるチェックボックス的な対応では済まされません。
このように、
- 「準備に時間がかかりすぎる」
- 「担当者によって質にばらつきがある」
- 「研修が形骸化しやすい」
という三重苦をどう解決するかが、多くの介護保険事業所に共通する課題です。
そこで新しい解決策として注目されているのが、AIを活用した「介護研修動画」の自動生成です。特にGoogleが提供する「NotebookLM」というツールは、公式資料を読み込ませるだけで、要点を整理した研修動画を作成できるため、研修準備のあり方を根本から変える可能性を持っています。
NotebookLMとは?介護事業所にとっての意味
NotebookLMの概要

NotebookLMは、Googleが開発した生成AIをベースにした情報整理・学習支援ツールです。従来のAIチャットのように「質問に答える」だけではなく、文書やPDF、Webページ、スプレッドシート、さらにはYouTube動画の内容まで読み込み、そこから知識をまとめ上げるという特徴を持っています。もちろん、AIに調べさせた情報やデータなどを入れることもできます。
これまでもブログや動画で紹介させていただいていますので、その活用事例も紹介します。
特に注目されているのが「Video Overview(動画解説)」という機能です。これは、アップロードした文書を要点ごとに整理し、音声付きスライド形式の動画を自動で生成するものです。つまり、「分厚い資料を要約して、研修で使える10分程度の動画に仕立ててしまう」ことが可能になります。
従来であれば、研修担当者が数十ページのマニュアルを読み込み、パワーポイントを作り、説明文を考え、ナレーションをつけるまでに膨大な時間がかかっていました。NotebookLMを使えば、これらの作業の大部分をAIが自動化してくれるため、担当者の負担は劇的に軽減されます。
介護保険事業所にとってのメリット

NotebookLMは単なる効率化ツールに留まりません。介護保険事業所にとっては、次のような具体的な利点があります。
- 法定研修の即時対応
厚生労働省のマニュアルをアップロードするだけで、研修動画が完成。研修準備にかかる時間をほぼゼロに近づけられます。 - 自施設マニュアルの整備
NotebookLMは文書を要点ごとにまとめ直す機能もあるため、自施設の規程や手順書を整理し、新しいマニュアルを作成する際の下地として活用できます。研修動画を作るだけでなく、「マニュアル作成の効率化」にも直結します。 - 研修の質の均一化
担当者ごとに研修の質に差が出る課題を解消できます。AIがベースの動画を作るため、毎年「同じ水準の研修」を提供でき、教育の一貫性が保たれます。 - 外国人職員への対応
NotebookLMは80以上の言語に対応しており、外国人介護職員に対しても同じ研修を多言語で提供できます。これまで「日本語の専門資料をどう伝えるか」で苦労していた部分を解決できます。 - 繰り返し学習の容易さ
研修動画は一度作ってしまえば何度でも利用可能です。新人研修や復習教材としても活用でき、同じ説明を何度も繰り返す必要がなくなります。 - カスタマイズ性の高さ
動画を作成するときには指示をしてカスタマイズができますので、特に強化したいテーマや分野を特定することができます。例えば、「居宅介護支援事業所を対象に」とか、「事例をベースに学習したい」など、指示によって、同じ資料をベースにしていてもまた別の切り口の動画を作ることもできます。
NotebookLMの価値は「効率化+実効性」
NotebookLMを導入することは、単に研修準備の手間を省くというだけではありません。むしろ大きな価値は、「効率化」と「実効性のある研修」の両立にあります。
効率化により担当者が余裕を持って準備できるようになれば、その分「研修のアレンジ」「自施設の事例の追加」「職員参加型の演習」といった工夫に時間を割けるようになります。つまりNotebookLMは、研修の“土台づくり”を自動化することで、担当者が本当に力を注ぐべき「研修の質の向上」に集中できる環境を作ってくれるのです。
NotebookLMで作成した介護研修動画のサンプル
厚労省マニュアルをそのまま研修動画に
NotebookLMの大きな強みは、厚生労働省が公開している公式マニュアルを、そのまま研修動画化できる点です。
従来は「分厚い資料を読み込んで要約し、スライドを作る」必要がありましたが、NotebookLMを使えば数クリックで10分前後の研修動画に変換できます。
これは、法定研修の実施を効率的かつ確実に進めるための大きな武器となります。
実際の動画例
以下は、NotebookLMを活用して作成した研修動画のサンプルです。いずれも厚労省の資料をベースにしており、法定研修にそのまま利用できる内容になっています。
こちら10分研修動画シリーズとして、虐待防止研修・ハラスメント対策研修・BCP研修(自然災害等)をまとめています。
これらは、いずれも10分程度で要点を整理した解説動画です。紙の資料を読むよりも視覚的・聴覚的に理解しやすく、職員にとって「集中して最後まで学びやすい」構成になっています。
動画研修がもたらす効果
動画を使った研修には、次のような効果があります。
- 理解しやすい:文字だけではなく、スライドと音声で説明されるため、記憶に残りやすい。
- 集中しやすい:長時間の講義形式と違い、10分程度に絞られているため、職員が集中力を維持できる。
- 繰り返し利用できる:新人教育やフォローアップ研修などで、何度も使い回すことが可能。
- 均一な研修が可能:担当者が変わっても同じ教材を使えるため、研修の質がブレない。
- 自然な日本語:AI音声というと、少し不自然な発音などがあり、集中がしにくいと言われることが多かったのですが、NotebookLMの音声出力はとてもクリアで自然な日本語です(ちょっと怪しい部分もあったりしますが、人がしゃべったとしてもエラーはありますから、それを考えたら相当質は高いと思います)。
サンプル動画の位置づけ
紹介した3本の動画は「公式マニュアルを要約した基本教材」として活用できます。しかしNotebookLMの強みは、それだけではありません。次の章で解説するように、自事業所のマニュアルや事例を追加して、オリジナルの研修動画に進化させることができます。
NotebookLMを使った介護研修動画の作り方
NotebookLMを使った介護研修動画の作成は、難しい専門スキルを必要とせず、誰でも短時間で実現できます。ここでは、実際の操作イメージや流れを具体的に解説します。さらに理解を深めたい方は、以下の解説動画をご覧ください。
ステップ1:研修テーマを決める
最初に「どの研修テーマを動画化するか」を決定します。優先すべきは法定研修の必須テーマです。つまり、先のサンプルで紹介したような項目です。
- BCP(業務継続計画)
- ハラスメント防止
- 虐待防止
これらは厚労省が研修を義務付けており、NotebookLMとの相性も抜群です。さらに、以下のようなテーマも候補になります。
- 感染症対策
- 認知症ケア
- 倫理・法令遵守
- 事故防止
- 業務改善
ステップ2:資料を準備する
次に、研修で使う資料を用意します。代表的なものは以下です。
- 厚労省が公開している公式マニュアルや手引き
- 自事業所が独自に作成したマニュアル、規程、業務フロー
- 過去の研修資料や事例集
NotebookLMはPDF形式を推奨しています。紙の資料しかない場合はスキャンしてPDF化すると便利です。
その他、信頼できる情報を提供しているウェブサイトや、公開されているYoutube動画のURLをコピーペーストすることでも学習できますので、ネット上で検索するのもいいかと思います。
ステップ3:NotebookLMにアップロード
準備したPDFファイルをNotebookLMにアップロードします。複数のファイルをまとめて読み込ませることも可能です。
例えば「厚労省の虐待防止マニュアル」と「自施設の虐待防止マニュアル」を一緒に読み込ませれば、両者の内容を踏まえた研修動画が生成されます。
ステップ4:要点確認
NotebookLMが自動で資料を解析し、章ごと・項目ごとの要点を抽出します。学習内容を確認するためには、ノートブック上で「マインドマップ」を作成すると、学習内容の全体像が確認できます。担当者はこの段階で以下の調整を行えます。
- 不足している情報があれば、資料を追加する
- 特定の分野に偏り過ぎていると感じた場合は資料を削除する
この「AI+人の調整」によって、より実用的な内容に仕上げられます。
ステップ5:動画解説を生成
調整が終わったら「動画解説」をクリックします。NotebookLMが要点をスライドにまとめ、AIナレーションを付けて自動で動画を生成します。
動画は通常10分前後に収まるように作成されるため、研修時間に組み込みやすいのが特徴です。「テンポよく」などの指示を入れると、早口で進行しますので8分程度の動画になる傾向があります。
そのまま「動画解説」のボタンを押すだけでもいいのですが、カスタマイズ指示を入れることができます。動画解説ボタンの右上での編集マーク(ペンのマーク)をクリックすると、具体的な指示を入力可能です。対象者や目的、研修のゴールなどを入れると、より意図した内容に近い動画ができるはずです。
ステップ6:研修に導入
生成された動画は、次のように活用できます。
- YouTubeに限定公開でアップロードし、職員に共有
- 社内のeラーニングシステムやライングループなどのワークグループに登録
- 集合研修でスクリーンに投影して全員で視聴
動画に加えて補足資料や確認テストを配布すれば、さらに理解度が高まります。
ステップ7:フィードバックと改善
実際に研修で使用した後は、職員からのフィードバックを集めます。NotebookLMなら修正も簡単で、追加資料を読み込ませたり、一部要点を修正するだけで新しいバージョンをすぐに作れます。
これにより、研修教材を「作りっぱなし」ではなく「進化させながら使い続ける」ことができます。
自施設マニュアルを組み込んでオリジナル化
厚生労働省の公式マニュアルだけでは不十分

厚生労働省が提供しているマニュアルは、介護業界全体に共通する基本的なルールや考え方を整理したものです。したがって、全国どこでも使えるという強みはありますが、実際の現場に完全にフィットするわけではありません。
例えば、BCP(業務継続計画)のマニュアルには「災害時の連絡体制を整える」と書かれていますが、その具体的な手順や連絡網は事業所ごとに異なります。ハラスメント防止のマニュアルでも「相談窓口を設ける」とありますが、実際に窓口を担当するのは誰なのか、どんなルートで対応するのかは施設によって違います。
つまり、「公式マニュアル=最低限」、「自施設マニュアル=実際に役立つ知識」という構図なのです。
NotebookLMによるオリジナル化の方法
NotebookLMは複数の資料を同時に読み込み、統合的に要点を抽出することができます。これを活かして、厚労省のマニュアルと自施設のマニュアルを組み合わせることで、「オリジナル介護研修動画」を作成できます。
例えば:
- BCP研修
- 厚労省の一般的な災害対応指針
- + 自施設の避難経路図、地域の災害ハザードマップの情報、災害時の担当割り当て、地域の防災拠点との連携フロー
- ハラスメント防止研修
- 厚労省の基本的な対応手順
- + 自施設の相談窓口担当者の氏名や連絡方法、内部報告体制の図解
- 虐待防止研修
- 厚労省の虐待防止マニュアル
- + 自施設で発生したヒヤリ・ハット事例、対応後の改善策
NotebookLMは両方の資料を要約し、自然に一つの流れにまとめてくれるので、担当者が「資料をつなぎ合わせる」手間を大幅に省けます。
職員に響く「自分ごとの研修」へ
公式マニュアルだけを読み上げる研修は、どうしても抽象的で「自分には関係ない」と受け止められがちです。しかし、自施設の実際のマニュアルや事例を組み込んだ動画を見れば、職員は「これは自分の職場の話だ」と強く感じるようになります。
たとえば、避難経路がスライドに表示され、自分の持ち場の動きが明記されている動画を視聴すれば、「自分が災害時にどう行動するべきか」が自然と頭に入ります。同様に、過去に起きたヒヤリ・ハット事例が解説されれば、職員は「次に同じことが起きたら自分はどうするか」と具体的に考えられるようになります。
オリジナル化の効果
- 定着度の向上:抽象的なルールが具体的な行動に落とし込まれる。
- 参加意欲の増加:自分の職場に関わる内容なので真剣に取り組める。
- 事業所全体の一体感:研修を通じて「うちの施設はこうしていく」という共通認識が醸成される。
つまり、NotebookLMは「研修を外部任せにするためのツール」ではなく、「現場に根ざしたオリジナル研修を作るための支援ツール」なのです。
グループワークにつなげる活用法
なぜグループワークが必要か

介護研修において、ただ知識をインプットするだけでは不十分です。研修で得た情報を「自分ならどう活かすか」「実際に現場でどう行動するか」に落とし込む必要があります。
この「自分ごと化」を促すために効果的なのが、グループワークです。
NotebookLMで生成した研修動画は要点が整理されているため、基礎知識を短時間で共有できます。そのうえで、職員同士が意見を交わす場を設けることで、実際の行動につながる研修に変えられるのです。
NotebookLMを使った問いの仕込み
NotebookLMの強みは、要点を整理するだけでなく、問いを作るヒントとしても使えることです。
動画を生成する際に、最後の部分で「グループワークにつなげるための問いかけ」を盛り込むことができます。たとえば:
- BCP研修の場合
「停電が発生したとき、あなたの担当エリアではどんな対応が必要ですか?」 - ハラスメント防止研修の場合
「もし利用者からの言動がハラスメントにあたるか判断に迷ったら、どう行動しますか?」 - 虐待防止研修の場合
「この事例と同じ状況が現場で起きたら、自分ならどう対応するか?」
こうした問いを動画内で提示しておけば、職員は視聴後すぐに「考えるモード」に切り替わります。
グループワークの進め方(例)
- 動画を全員で視聴
→ 職員が共通の知識を持った状態でスタートできる。 - 動画の最後に問いかけを提示
→ NotebookLMにあらかじめ「グループワーク用の問いを挿入する」と指示しておく。 - 小グループに分かれて討議
→ 4〜5人程度で話し合うことで、一人ひとりの意見が出やすくなる。 - グループごとに発表
→ 全体で意見を共有し、事業所全体の共通認識を育てる。 - まとめ・フィードバック
→ 管理者や研修担当者がコメントし、学びを定着させる。
グループワーク活用のメリット
- 参加型の研修になる:職員が自ら考え、意見を出すことで「受け身」から脱却できる。
- 現場に即した解決策が出る:実際の業務に直結した意見が自然に集まる。
- 職員間の連携強化:議論を通じて、普段接点の少ない職員同士も協力意識を持てる。
- 次の改善行動につながる:話し合いで出た意見を業務改善に活用できる。
NotebookLMが支える「仕組み化」
重要なのは、この流れを毎回の研修に組み込むことです。NotebookLMを使えば「動画の最後に問いを差し込む」ことを習慣化でき、研修の設計そのものを効率的に仕組み化できます。
こうすることで、研修が単なる義務ではなく、「職員が主体的に考える学びの場」へと進化します。
動画研修のメリット:手抜きではなく理解を深める手段
「動画=手抜き」という誤解
動画を使った研修というと、「ただ動画を流して終わりにしているのでは?」という懸念を持つ方も少なくありません。確かに、内容を吟味せずに外部の動画を流すだけなら、職員の理解は深まりませんし、形だけの研修になってしまうでしょう。
しかし、NotebookLMを活用して作成した介護研修動画は、むしろ「効率化と理解促進を両立する仕組み」と言えます。動画には、紙の資料や口頭説明にはない強みがあるのです。
視覚と聴覚で理解できる
人間の記憶は、複数の感覚を使うほど定着しやすいとされています。文字だけの資料よりも、映像と音声を組み合わせた動画のほうが理解度が高まりやすいのはこのためです。
- スライドに図やキーワードが表示される
- AIナレーションがポイントを説明してくれる
この二重の刺激によって、職員は短時間でも要点をしっかりと頭に入れることができます。
短時間で集中できる
NotebookLMが生成する研修動画は、10分前後に収まることが多いです。これは「人が集中して学べる時間」に適した長さと言われています。
- 60分の講義形式 → 聞き流してしまう
- 10分の動画形式 → 集中して最後まで理解できる
こうした違いは、学習効果の差として現れます。
繰り返し学習が容易
一度作成した研修動画は、何度でも繰り返し利用できます。
- 新人研修で繰り返し視聴
- 一度研修を受けた職員が復習用に視聴
- 事故やトラブル発生時に再確認のために視聴
こうした使い方ができるのは、動画ならではの強みです。研修担当者が毎回同じ説明を繰り返す必要はなくなります。
均一な質の研修が可能
従来の集合研修では、担当者によって説明の仕方や強調するポイントが異なり、研修の質にばらつきが生じがちでした。NotebookLMを使って作成した動画を使えば、誰が研修を担当しても同じ内容を均一に伝えることができるようになります。
これは、複数の拠点を持つ法人やグループにとって特に有効です。
時間と場所を選ばない柔軟性
動画は「オンデマンド研修」にも活用できます。
- シフト勤務で全員が一度に集まれない場合
- 夜勤者が昼間に受講する必要がある場合
- 短時間勤務の職員が後日受講する場合
こうした状況でも、動画を用意しておけば各自が都合の良い時間に学べます。これにより、研修受講率の向上や職員満足度の向上にもつながります。
「効率化+理解促進」の両立
以上のように、動画研修は単なる「準備の手抜き」ではなく、職員にとって理解しやすく、繰り返し学べて、均一な研修を実現する手段です。NotebookLMを活用することで、その動画を簡単に自作できるようになった今こそ、動画研修を本格的に導入する価値があります。
NotebookLMを活用するメリットと注意点
NotebookLMを使うメリット
NotebookLMを研修に取り入れることで得られる利点は多岐にわたります。単なる「効率化」にとどまらず、介護事業所にとって本質的なメリットをもたらします。
① 準備時間の大幅削減
従来は研修担当者がマニュアルを読み込み、要点を整理し、スライドを作り、発表資料を整えるまでに数日かかっていました。NotebookLMを使えば、資料の読み込みから動画化まで数分で完了します。これにより、研修準備の負担を大幅に軽減できます。
② 公的資料に基づいた信頼性
厚生労働省の公式マニュアルを直接読み込ませることで、内容の信頼性が担保されます。「根拠のある研修」を行えることは、利用者や家族への説明責任を果たすうえでも重要です。
③ 自施設への適応性
自事業所のマニュアルや規程を追加することで、現場に即したオリジナル研修が作れます。これにより「うちの施設ではどうするのか」を明確に伝えられ、職員の納得感が高まります。
④ 多言語対応で外国人職員にも有効
NotebookLMは80以上の言語に対応しており、日本語の研修をそのまま多言語に展開可能です。外国人介護職員の教育を効率化できる点は、多様化が進む介護現場にとって大きな強みです。
⑤ 繰り返し利用できる資産化
一度作成した研修動画は、何度でも使い回せます。新人研修、定期研修、フォローアップ研修など、様々な場面で繰り返し利用できるため、教材が資産として積み重なります。
NotebookLMを使う際の注意点
メリットが大きい一方で、NotebookLMを導入する際には注意点もあります。これを理解しておくことで、より効果的に活用できます。
① 動画の表現はシンプル
生成されるスライド動画は、情報整理には優れているものの、ビジュアル的にはシンプルで単調になりがちです。そのため、必要に応じて写真や現場の画像を追加し、補足資料と組み合わせることが望まれます。
② AI任せにしすぎない
NotebookLMが自動で抽出した要点は正確性が高いものの、施設ごとの優先順位や強調すべきポイントまでは反映されないことがあります。最終的なチェックと調整は研修担当者の役割として欠かせません。
③ 職員の受け止め方に配慮
動画を活用することが「手抜き」と誤解されないよう、研修の設計段階で「動画視聴+グループワーク」「動画視聴+確認テスト」といった仕組みを取り入れることが重要です。
④ ネット環境の整備が必要
動画をスムーズに視聴するには、ある程度のインターネット環境が必要です。通信状況が不安定な環境で使用する場合は、あらかじめオフライン再生できるようにダウンロードしたファイルを持っておくと安心です。
NotebookLMを上手に活用するために

NotebookLMは強力なツールですが、「AIに任せきりにする」のではなく、「AIが作った下地を人が研修設計で活かす」という姿勢がポイントです。
- AIが効率化を担当
- 人が現場の実情を反映し、参加型の仕組みを加える
この役割分担によって、NotebookLMは研修の効率化と実効性を両立させる真のパートナーとなります。
介護研修動画で研修を“自分ごと化”する
介護保険事業所にとって、職員研修は避けて通れない業務であり、BCP・ハラスメント防止・虐待防止といった法定研修は年々重要性を増しています。しかし現実には、準備に時間がかかり、担当者によって研修の質がばらつき、形骸化してしまうという課題がありました。そして、準備をすること・間に合わせることだけにエネルギーを使い、その先の効果や改善・発展という部分に力を入れることができないという現実がありました。
その解決策として、NotebookLMを活用した介護研修動画は大きな可能性を秘めています。
- 厚労省のマニュアルをベースに10分程度の研修動画を自動生成できる
- 自施設のマニュアルや事例を組み込んで「オリジナル教材」にできる
- 動画の最後にグループワーク用の問いを差し込み、参加型の学びに展開できる
- 動画は何度でも使い回せるため、新人研修や復習にも活用可能
- 多言語対応により、外国人職員にも同じ内容を届けられる
つまりNotebookLMは、研修担当者の負担を軽減するだけでなく、研修の質そのものを高める仕組みでもあります。動画という形式を取り入れることで、職員は短時間で集中して学び、繰り返し視聴して理解を深められるようになります。
また、NotebookLMは研修だけでなく、マニュアル作成や業務手順書の整理といった場面でも有効に活用できます。研修動画と併せてマニュアルそのものを整備すれば、事業所全体の業務の標準化と効率化にもつながります。
これからの介護業界に求められるのは、「義務だからやる研修」ではなく、「現場で本当に役立つ研修」です。NotebookLMを使った介護研修動画は、効率化と実効性を両立させ、研修を職員一人ひとりの“自分ごと”へと変えていく力を持っています。
研修を義務から学びへ。
準備の負担から、参加型の仕組みづくりへ。
その転換の第一歩として、NotebookLMを取り入れた介護研修動画は、今まさに検討すべき選択肢だと言えるでしょう。

編集:
介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト編集部(主任介護支援専門員)
ケアマネジャーや地域包括支援センターなど相談業務に携わった経験や多職種連携スキルをもとに、介護福祉専門のウェブ制作ウェルコネクトを設立。情報発信と介護事業者に特化したウェブ制作サービスとAIを活用した業務改善提案を行う。