電子カルテは2030年に約100%へ。介護DX・介護AXはどこまで進むのか?

医療では2030年までに電子カルテ普及率「約100%」を目指すことが正式に示されました。

では、介護はどうでしょうか。

介護業界でも国保連請求の電子化や介護ソフトの導入はかなり進んでいます。一方で、記録や計画書は紙、事業所間のやり取りはFAXという現場もまだ残っています。

ただ、国が進めている介護DXを見ると、次の方向性はかなり明確です。

これからの介護DXの中心は、「紙を電子化すること」ではありません。バラバラに存在する介護データをつなぎ、そのデータをAIでも活用できるようにすることです。

令和9年度介護報酬改定に向けた介護給付費分科会や、最新の介護保険部会資料から、介護DXがどこまで進んでいるのかを見ていきます。

医療は「電子カルテ約100%」へ。介護はどうなる?

電子カルテ普及100%へのロードマップ

医療DXは、電子カルテを導入する段階から「クラウド化し、全国でデータを共有する段階」に進もうとしています。

厚生労働省は2026年9月9日、「電子カルテ普及計画」を公表しました。

厚労省の電子カルテ普及計画

※厚生労働省「電子カルテ普及計画の概要について」より

計画では、2028年度までに電子カルテ未導入の一定の200床以上の病院で普及率100%を目指し、さらに2030年までに電子カルテ普及率を約100%とする目標を掲げています。

同時に、「医療機関のシステムのクラウドネイティブ化を集中的に実施する」と明記されました。すでに電子カルテを導入している医療機関についても、更新時にクラウドネイティブ型などへの移行を支援していく方針です。

厚労省資料、電子カルテ普及推移

※厚生労働省資料「電子カルテ普及計画(案)」より

つまり医療では、

紙カルテから電子カルテへ

という話だけではなく、

電子カルテ → クラウド → 医療機関同士の情報共有

へと政策の軸が移っています。

一方、介護には「介護ソフト普及率100%」という同じ形の目標はありません。

しかも、介護の場合は「介護ソフトを使っていますか?」だけではデジタル化の実態を測れません。

請求には介護ソフトを使っている。でも日々の記録は紙。計画書はWordやExcel。ケアマネとのやり取りはFAX。

こうした事業所も「ソフトを使っている事業所」だからです。

介護現場は「請求は電子、現場は紙」がまだ残っている

介護現場のデジタル化は?

介護業界では、請求業務の電子化と、現場業務全体のデジタル化にはまだ大きな差があります。

2026年8月28日の第263回社会保障審議会介護給付費分科会では、最新の介護テクノロジー導入調査が示されています。

介護記録ソフト等を含む「介護業務支援機器」の導入率は、

  • 訪問系 29.2%
  • 通所系 36.7%
  • 居住系・入所・泊まり系 56.4%

でした。

介護現場でのテクノロジー普及率

※厚生労働省資料「介護現場の生産性向上等の推進」より

ここで注意したいのは、この数字を「介護ソフトを使っている事業所は訪問系で29.2%しかない」と読むのは間違いだということです。

調査対象は、単なる請求ソフトではなく、現場の記録や情報管理などを支援する「介護業務支援機器」です。

つまり、

請求ソフトだけ使っている事業所

と、

利用者情報・計画・記録・実績・請求まで一連の業務をデジタル化している事業所

は分けて考える必要があります。

数年前の調査を見ると、この違いはさらに分かりやすくなります。

2021年度の厚生労働省調査では、訪問介護と居宅介護支援の利用者記録・介護報酬請求関係文書について、およそ7割が「パソコン等で作成し、紙で保存」という状態でした。

つまり、手書きの紙がWordや介護ソフトに変わっただけで、最後は印刷してファイルに綴じていたわけです。

これも電子化ではあります。しかし、データ活用という意味では紙とそれほど変わりません。WordやExcelなどの汎用オフィスソフトで入力したとしても、検索性が低ければ、そこから必要な時に情報を取り出すこともできません。

介護DXは、ここから次の段階に進む必要があります。

介護DXの本丸は「電子化」ではなく「データをつなぐこと」

いま国が急速に進めているのは、介護ソフトの導入そのものよりも、介護ソフト同士でデータをやり取りできる環境づくりです。

その象徴が「ケアプランデータ連携システム」です。

ケアプランデータ連携システムの拡大

これまで、居宅介護支援事業所とサービス事業所の間では、ケアプランの予定や実績をFAX、郵送、手渡しなどでやり取りすることが一般的でした。

ケアプランデータ連携システムでは、異なる介護ソフトを使っていても、ケアプラン情報を電子的に送受信できます。

厚生労働省の試算では、紙でやり取りした場合と比較して、印刷・郵送・移動などにかかる作業時間は事業所全体で月52.4時間から18.1時間へ、経費は月13.4万円から6.7万円へ削減できるとされています。

困った

もちろんこれはケアプランデータ連携システムが完全実施される世界線での話ですから、ちょっと遠すぎてまったく実感ないですけどね。

そして、この仕組みの導入が2026年に急速に進みました。

厚生労働省資料に掲載された導入率は、

2025年5月末 5.3%
2025年12月末 10.2%
2026年7月末 53.1%

まで上昇しています。

ケアプランデータ連携システムの普及率推移

※厚生労働省資料「介護現場の生産性向上等の推進」より

ただし、この53.1%は有効なライセンス数から算出した「導入率」です。実際に53.1%の事業所が日常的にケアプランを送受信している、という意味ではありません。

さらに重要なのは、その次です。

介護情報基盤とは

※厚生労働省資料「介護現場の生産性向上等の推進」より

2026年9月18日の介護保険部会では、2027年1月をめどにケアプランデータ連携機能を「介護情報基盤」に統合し、2027年4月以降はAPIによって介護ソフトから直接データ連携できるようにする方針が示されました。介護ソフト側の対応は必要になります。

APIというと難しく聞こえますが、イメージはシンプルです。

今までは、A社の介護ソフトからデータを取り出し、別のシステムを使って送り、B社のソフトに取り込むという「荷物の受け渡し」に近い仕組みでした。

CSV連携とAPI連携の違い

CSV連携は、コンビニや町の宅配ボックスで受け取るようなものです。

荷物自体は届いていますが、コンビニまで自分でまで取りに行き、受け取って家の中へ運ぶ必要があります。

CSVも同じで、データは受け取れますが、ファイルを受け取り、それを介護ソフトに取り込む作業が必要です。

一方、API連携は、必要な荷物が直接、自宅の決められた場所まで届くようなものです。

システム同士があらかじめつながっているため、毎回CSVファイルを取り出したり、取り込んだりする必要がありません。

CSVは「データを受け取って自分で取り込む」、APIは「システム同士が直接データを受け渡す」。

この違いです。

API連携が進めば、ソフトとソフトの間に道路ができ、必要なデータを直接やり取りしやすくなります。

介護情報基盤ではケアプランだけではなく、要介護認定情報、介護保険証等の情報、LIFE情報、住宅改修費や福祉用具購入費の利用情報なども共有対象になります。全国の市町村については、2028年4月1日までの本格運用開始が目標です。

これこそが、介護DXの大きな転換点です。

「それぞれの事業所がパソコンを使う」から、「介護データそのものが事業所やサービスを越えて動く」へ。

介護業界はようやく、この段階に入ろうとしています。

そしてAIへ。AI導入の前に「使えるデータ」が必要になる

介護AI導入率はまだ8.4%

介護業界でもAI活用は確実に広がります。ただし、AIだけを導入しても業務は劇的には変わりません。

令和7年度の厚生労働省調査では、「生成AI等のAIツール」を導入済みと回答した介護施設・事業所は8.4%でした。

※厚生労働省資料「令和6年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和7年度調査)」

6,875事業所のうち578事業所です。ここには議事録生成ソフトやケア方法の標準化ツールなども含まれています。

まだ1割に届きません。

しかし国の議論はすでに先へ進んでいます。

「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会の取りまとめでは、計画書やサービス担当者会議の議事録について、生成AIを使って原案を作ることが業務効率化につながると明記されています。

さらに今後は、AIによるケアプラン作成支援をどのように介護現場へ組み込むかについても検討が必要とされています。

ただし、ここで順番を間違えてはいけません。

AIは大量の情報を整理したり、文章を作ったりすることは得意です。しかし、利用者の記録が紙、計画書がWord、実績が別の介護ソフト、他事業所との情報交換がFAXという状態では、AIが利用できるデータそのものが分断されています。

たとえるなら、高性能なエンジンを買ってきても、道路がなければ速く走れないのと同じです。

だからこそ現在、

紙 → デジタル化 → データ標準化 → システム間連携 → API → AI

という順番で環境整備が進んでいます。

令和9年度介護報酬改定に向けた議論でも、介護現場の生産性向上は主要テーマの一つです。特に、施設系に比べてテクノロジー導入が遅れている訪問・通所サービスで、介護記録ソフトなどをどう普及させ、生産性向上につなげるかが重要になっています。

もちろん、ここにはAI活用における個人情報の取り扱いなど、先に解決しなければいけない問題も山積しており、この部分がクリアになるかどうかも注目されます。先の介護給付費分科会でのヒアリングにおいてもケアテック協会がこのように発信しています。

ケアテック協会からの政策提言

※厚労省介護給付費審議会資料「介護DX・AXの推進による生産性向上の先にある介護の質の向上と持続可能な介護サービスの提供を実現するための要望」

介護DXは「データがつながるか」が問われる時代へ

介護DXは、「紙をなくせば完成」という段階ではありません。

請求ソフトを導入する。記録を電子化する。クラウドを使う。

これらはもちろん重要です。

しかし、その先にあるのは、一度入力した情報をもう一度入力しなくてもいい仕組みです。

ケアプラン、サービス実績、要介護認定情報、LIFE、医療情報などが必要な範囲でつながれば、転記や確認作業は大幅に減らせます。そして、そのデータをAIが整理し、議事録や計画書の原案作成を支援することも現実的になります。

医療では2030年に電子カルテ普及率約100%という目標が示されました。

介護に同じ目標はありません。しかし介護も確実に、「電子化」から「データ連携」、そして「AI活用」へ動き始めています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)が「デジタル技術で業務やビジネスモデルを効率化・再構築する取り組み」であるのに対し、AX(AIトランスフォーメーション)は「AIを前提にし、意思決定や組織・業務全体を知能化・自律化する次のフェーズ」であると言われています。つまり、今までと違う新しい仕組みにシフトするということです。

ただ、介護事業所にとって重要なのは、いきなり最新のAIツールを導入することではありません。

まず、自分たちの業務のどこに紙・転記・二重入力・FAXが残っているのかを把握すること。

そこをデジタル化し、データをつなげられる環境にしていくことが、これからの介護DXの第一歩です。

介護事業所のデジタル化・AI効率化のご相談も承っています

ウェルコネクトでは、介護事業所のデジタル化やAIを活用した業務効率化についてのご相談も承っています。

「紙やExcelで行っている業務を整理したい」「同じ内容を何度も転記している」「生成AIを導入したいが、何に使えるのかわからない」といった段階からでも構いません。

既存の介護ソフトや現在の業務フローを確認しながら、新しいシステムを入れること自体を目的にせず、実際に現場の負担が減る方法を一緒に検討します。

介護福祉のウェブ制作ウェルコネクト

編集:
介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト
編集部(主任介護支援専門員)

ケアマネジャーや地域包括支援センターなど相談業務に携わった経験や多職種連携スキルをもとに、介護福祉専門のウェブ制作ウェルコネクトを設立。情報発信と介護事業者に特化したウェブ制作サービスとAIを活用した業務改善提案を行う。

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