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AI時代の検索最適化、あなたのホームページは見つけてもらえていますか?
2025年、Google検索に「AI Overviews(AIによる概要表示)」が導入され、私たちの“検索行動”が大きく変わり始めています。
ChatGPTなどの生成AIの利用が拡大し、ユーザーは検索結果を「クリックすることなく」その場で答えだけを得ることが一般的になってきました。
このような時代に、介護サービス事業所が「検索に強いホームページ」を持つ意味は、これまで以上に重くなっています。
なぜなら、地域の利用者や求職者はこれまで通り検索をしていますが、表示されてもクリックされないという現象が確実に起きているからです。

介護業界にとっても検索流入は、次のような課題解決につながる重要な接点です。
- 地域の利用者やケアマネに見つけてもらう
- 求職者に魅力を知ってもらう
- 他の事業所と差別化する
しかし、従来のSEO対策だけでは不十分になってきた今、「AI時代の検索最適化」=SEO × LLMO(大規模言語モデル最適化)の視点が欠かせません。
この記事では、AIによる要約表示で何が起きているのか、なぜクリックされなくなるのか、そして介護事業所として今できることは何かを、わかりやすく解説していきます。
Googleの「AI Overviews」で検索結果はどう変わったか?
2025年3月、Googleは検索結果の表示方法に大きな変化をもたらす「AI Overviews(エーアイ・オーバービューズ)」という新機能を導入しました。
これは、従来の検索結果(リンクの一覧)とは異なり、GoogleのAIが検索結果の一部を「要約して表示する」というもので、ユーザーの検索行動に大きな影響を与えています。
AI Overviewsとは?―「リンクを選ぶ」から「答えをもらう」へ
「AI Overviews」は、Googleが検索結果ページの最上部に表示する、AIによる自動要約の回答文です。
ユーザーが質問やキーワードを入力すると、GoogleのAIが数多くのウェブサイトを読み込み、複数の情報を統合・要約した答えを数行の文章で表示します。
たとえば、ユーザーが以下のように検索したとします。
「介護福祉士国家試験 2025年 日程」
この場合、Googleは厚生労働省や試験センターなどの複数の信頼できる情報源から「2025年の介護福祉士国家試験は1月26日(日)開催」という情報を抽出し、それを1文の形で画面上部に提示します。
そして、その下に引用元としてリンクが小さく表示される──これがAI Overviewsです。
つまり、ユーザーはリンクを開かずとも「答えだけを得る」ことができるようになったのです。

どんな影響が出ているのか?―自然検索からのアクセスが激減
この変化によって、従来の「検索結果に表示される → 興味を持った人がクリックする」という導線が大きく崩れました。
マーケティング会社「キーワードマーケティング」の調査(2025年5月実施)によると
- 「AI Overviewsの影響で、自社サイトへの自然検索流入が減少した」と感じている人:61.9%
- 「SEO対策の見直しを始めた、またはすでに変えた」と答えた人:90%超
このデータは、単なる体感ではなく、実際に多くのサイトでアクセスが減っていることを示しています。
※出典:ネットショップ担当者フォーラム(2025年6月2日)
特に、「アクセスを集めて人材募集につなげたい」「地域の利用者に見つけてもらいたい」と考える介護事業所にとっては、これは見過ごせない変化です。
検索エンジンなのに、なぜ「クリックされない」のか?
AI Overviewsでは、次のような仕組みでクリック率が下がる傾向があります:
▶ ユーザーは「知りたいこと」に即答され、満足してしまう
たとえば「介護福祉士国家試験の日程」など、明確な“事実”が知りたい検索では、
ユーザーはAIが提示した1文の答えで用事が済んでしまい、元のサイトを見に行く必要がなくなります。
▶ 引用元のリンクが目立たず、行動につながりにくい
AI Overviewsは答えを出してくれますが、引用元のサイトは小さく補足として表示されるだけです。
クリックされる確率は当然下がります。
▶ 表面的な質問には、AIの方が早く・わかりやすく答える
「介護報酬の加算額は?」「介護保険の利用条件は?」といった検索では、
AIの要約が人間の文章よりも端的かつ早く情報に到達できるため、
ユーザーが「わざわざ他のサイトを見に行く必要がない」と判断しやすくなります。
このように、「AIに引用される=人が読んでくれる」とは限らない時代が始まっているのです。
クリックされないという現象は、業界や検索テーマによっても大きく異なります。
この点については、次のセクションで詳しく解説します。
クリックされる検索、されない検索──「検索意図」の違いがすべてを分ける
AI OverviewsやChatGPTなど、生成AIによる検索が広がる中で、
どんな情報がクリックされて、どんな情報はクリックされなくなったのか──
ここを正しく理解することが、これからのホームページ戦略で最も重要な視点です。
結論からいえば、「検索する人の目的(検索意図)」によって、クリック率は大きく変わります。
クリックされない検索の典型:答えが明確な「事実確認系」
たとえば、次のような検索ワードを見てください
- 「介護福祉士国家試験 2025年 日程」
- 「生活援助 単位数 」
- 「訪問介護 サービス内容」
これらの検索は、ユーザーが「具体的な情報を1つだけ知りたい」というニーズを持って行います。
このとき、AI OverviewsやChatGPTは、その情報をわかりやすく要約し、検索結果の画面上に即座に答えを提示してしまうため、ユーザーは「リンクをクリックする必要がない」と判断するのです。
➤ つまり、「答えがひとつに定まる検索」は、AIに奪われやすい。
そしてこれは、「介護福祉士試験の日程」や「介護保険の対象者」など、介護業界にも多く該当する検索タイプなのです。
一方で、クリックされやすい検索もある:「比較・検討・深堀り型」
次のような検索ワードはどうでしょうか:
- 「介護福祉士国家試験 勉強法 社会人」
- 「訪問介護とデイサービスの違い」
- 「認知症の母を在宅で介護するコツ」
- 「介護業界 転職後悔しないポイント」
これらは、ユーザーが単なる事実ではなく、自分に合った答えを求めている検索です。
つまり、
✅「もっと詳しく知りたい」
✅「事例や意見を比較したい」
✅「自分に合った選択肢を探したい」
という**“深い検索意図”**が背景にあるため、AIの一文回答だけでは満足できず、複数のページを比較して読む行動に結びつくのです。
➤ こうした検索には、事業所の体験談・サービスの違い・職員の声など、独自の情報が決定打になります。
介護業界でも「検索テーマによってクリック率が大きく異なる」
これは非常に重要な点です。
介護業界は、検索されやすいテーマ(加算制度・資格・サービス内容)を多く抱える一方で、
「比較・体験・選択」に関わるテーマでは、今も検索結果の中から人がサイトを選んでクリックしています。
たとえば:
検索ワード | AIだけで完結しがち? | クリックされやすい? |
---|---|---|
訪問看護Ⅰ3 単位数 | ◎(金額だけわかればよい) | ✕ |
○○市 訪問介護 評判 | ✕ | ◎(複数を比較したい) |
介護職 夜勤なし 転職体験談 | ✕ | ◎(具体的な体験を知りたい) |
要介護2 ケアプラン例 | ◯(どのくらいのサービスが利用できるのか参考に) | △ |
SEOだけでは届かない時代に──介護事業所が取り組むべき“検索最適化”の現実解
ここまでで、「検索されてもクリックされない」というAI時代の課題と、
「クリックされる検索意図を意識した情報発信」の重要性を解説してきました。
では、多忙な現場を抱える介護サービス事業所が、限られたリソースの中で実践できるSEO・LLMO対策とは何か?
ここからは、“すぐにできる・効果がある”という視点で、現実的な対策をご紹介します。
✅ 1. 差別化キーワードを明確に表現する(SEO+LLMO)
検索エンジンにもAIにも、まず見つけてもらうことが第一歩。
そのために、自社の強み・特徴を「地域名×サービス×独自性」で言語化しておきましょう。
- 「○○市で認知症ケアに強みを持つデイサービス」
- 「夜間・早朝にも対応可能な男性スタッフ常駐」
- 「全員が介護福祉士の訪問介護事業所」
→ トップページの見出しや冒頭文、メタディスクリプションにこうした表現が入っていると、
検索エンジンだけでなくAIにも情報が伝わりやすくなります。
✅ 2. FAQ・Q&A形式のコンテンツを設ける(LLMO対策の王道)
ChatGPTやGoogleのAI Overviewsは、構造化された情報を好んで引用します。
そのため「よくある質問(FAQ)」や「サービスの流れをQ&Aで説明するページ」は、AI検索との相性が抜群です。
- Q. 訪問介護ではどんなことをしてくれるの?
- A. 入浴・食事・排泄介助などの身体介護や、掃除・買物・洗濯などの生活援助のサービスがあります。利用者様の状況に応じ、ケアプランに基づいてサービスを提供します。
- Q. サービスはいつから使えますか?
- A. ケアマネジャーを含めた担当者会議を行い、当事業所との契約の後にサービス利用開始となります。
→ このように質問+簡潔な回答のセットを複数掲載するだけで、AIが情報を拾いやすくなります。
✅ 3. 本人・家族・職員などの“人の声”を載せる
AI Overviewsは客観的事実を要約できますが、人の感情・経験・価値観までは要約できません。
だからこそ、以下のような「人間味のある一次情報」は、今後さらに価値が高まります:
- 利用者やご家族の声
- 職員のインタビュー
- 地域イベントや研修の報告などのレポート
→ “クリックされる理由”にも直結しますし、AI検索でも「独自性が高い」と評価されるポイントです。
✅ 4. 「続きを読みたい」と思わせる導入文を書く
AI Overviewsでは、記事の冒頭の数文が要約に使われることが多いです。
したがって、ページの最初の一文〜三文で「続きを読みたくなる」ように書く工夫が必要です。
- NG:当事業所の訪問介護サービスについてご紹介します。
- OK:在宅ではもう無理。認知症の母の介護に悩んでいた私が、在宅介護を続けられた理由――それが◯◯介護サービスでした。
→ これは採用ページやブログにも応用できる非常に強力なテクニックです。
✅ 5. Googleビジネスプロフィール(旧マイビジネス)を活用する
SEOと地域性を両立する手段として、Googleのビジネスプロフィールは非常に効果的です。
営業時間、写真、口コミ、サービス内容などをしっかり登録しておくことで、
「地名+サービス名」での検索時に優先的に表示されるようになります。
特に介護業界では、地域の利用者が「近くの事業所」を検索する傾向が強いため、ローカルSEOの要として非常に重要です。
次のセクションでは、こうした対策の“本質的な狙い”――
「クリックされる検索意図に応え、信頼される存在になる」ために何が必要かを掘り下げていきます。
“本気で求めている人”に届く──クリックされるサイトの条件とは?

AI OverviewsやChatGPTなどの登場により、表面的な疑問には一瞬で答えが出る時代になりました。
しかし、検索を通じて情報にたどり着くすべての人が、ただ表面上の「事実」だけを求めているわけではありません。
中には、「自分に合うサービスをじっくり見極めたい」「納得できる情報を集めてから決めたい」と、本気で求めている人たちがいます。
こうした人たちは、AIの要約で得られる情報だけでは満足せず、自らの意思でサイトを訪れ、じっくりと読み込み、判断します。
介護業界には「本気で探している人」が多い
介護サービスの利用や転職を検討している人の多くは、何となく検索しているのではなく、
生活や人生に関わる大切な選択のために、情報を探しています。たとえば、
- 認知症の親の在宅介護を続けられるか、サービスを比較検討したい
- 理想の介護を実現できる職場と出会いたい
- 自分に合った働き方ができる職場で働きたい
こうした“本気の検索者”は、AIが示す一文の要約では決断できないのです。
だからこそ、信頼できる情報を発信しているホームページが必要になります。
特に介護職は、給料や企業のブランド価値で職場を選ぶよりも、やりがいや自己実現を目指して職場を選ぶ方が多いです。金額の多さや名前で選ぶのではなく、もっと深い部分に価値を求める方が多いため、なにを事業所の魅力として伝えるかが非常に重視されます。
選ばれるサイトは、「納得したい気持ち」に応えている
検索者が「この事業所を選びたい」と思うまでには、安心感・信頼感・共感が欠かせません。
それを伝えるために、ホームページでは以下のような工夫が有効です。
✅ 利用者・家族・職員の“声”を届ける
- 「安心して任せられた」「現場に温かさを感じた」などの実際の体験は、言葉の説得力が違います。その言葉には重みと価値があります。
✅ サービス内容を“自分ごと”に引き寄せて伝える
- 「こんな方にご利用いただいています」「このようなケースにも対応できます」といった語りかけが、読み手の想像を促します。どんな事業所かをイメージすることができるよう表現の工夫が求められます。
✅ 価値観や方針をしっかり示す
- 「自立支援にとことんこだわります」「24時間の安心を届けます」など、他の事業所との違いや考え方を言語化することで、選ばれる理由になります。採用においても、「ICTを活用した働きやすい職場」「子育て世代も活躍中」などのアピールポイントを前面に出すことで差別化ができます。
「本気で求めている人」にこそ、あなたのサイトを届けよう
今後、検索の表面はAIが担っていくでしょう。
でも、最後に「どこに連絡するか」「どこで働きたいか」を決めるのは、人の心です。
だからこそ、介護事業所のホームページはただ情報を載せるのではなく、
本気で探している人にとって“決め手”となる存在であるべきです。
AIが“きっかけ”を作り、
あなたのホームページが“決断”を後押しする。
SEOであっても、LLMOであっても、最終的にはやはり検索ユーザーの悩みや課題にちゃんと向き合っていること。技術的なことは変わっても、本質的な部分は同じです。より高い解像度でその悩みを解決することができるのはあなたたちのホームページです。
- 頻回なオムツ交換が大変で困っている人が定期巡回のサービス導入に際して感じている不安は何か。
- 夜勤のある職場で働くことに不安を感じている人に来てもらうための安心材料とは何か。
今まで接してきた利用者や求職者から聞いた情報、感じた情報は代えがたい財産です。これらの生の体験や情報を、特定できない範囲で一般化し反映していくことで、同じような悩みを持っている人に共感してもらえるサイトが作れます。
そのような存在を目指すことで、これからの時代にも「選ばれる事業所」になっていくことができるのです。
まとめ|AI時代の検索最適化で、選ばれる介護事業所へ
AI OverviewsやChatGPTのような生成AIの普及により、検索を取り巻く環境は大きく変化しました。
今や、ユーザーは「検索結果を見てリンクをクリックする」のではなく、
AIから直接答えを得る時代に突入しています。
この変化は、介護サービス事業所にとっても無関係ではありません。
サービスの利用者・ご家族、そして求職者までもが、検索で事業所を知り、比較し、選ぶ流れの中にいるからです。
これからの検索対策は、「SEO × LLMO」の両輪で考える
目的 | 必要な視点 |
---|---|
見つけてもらう | SEO(検索エンジン最適化)でキーワードと地域性を整える |
AIに引用される | LLMO(大規模言語モデル最適化)で構造化された明快な情報を用意する |
クリックしてもらう | 本気で探している人の気持ちに応える内容・体験・共感を載せる |
今、事業所が取り組むべきこと(再整理)
- ✅ 差別化キーワードを見出しや冒頭文に明記する
- ✅ FAQやQ&A形式のページをつくる
- ✅ サービス内容を「誰に、どんな形で提供しているか」を明文化する
- ✅ 利用者・職員の“リアルな声”や事例を掲載する
- ✅ Googleビジネスプロフィールなどローカル情報の整備を行う
AIに拾われ、クリックもされるサイトは、“人の役に立つサイト”
AI時代の検索では、「上位表示された」だけでは不十分です。
求められるのは、その先で「行動につながる」情報を届けること。
- あなたのホームページが「安心のきっかけ」になっているか
- あなたの言葉が「信頼につながる判断材料」になっているか
- あなたの姿勢が「ここに相談したい」という想いを引き出しているか
介護という“生活に密接した分野”だからこそ、
正確さ・誠実さ・現場らしさをもって、AIと人の両方に信頼されるホームページを目指していきましょう。

編集:
介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト編集部(主任介護支援専門員)
ケアマネジャーや地域包括支援センターなど相談業務に携わった経験や多職種連携スキルをもとに、介護福祉専門のウェブ制作ウェルコネクトを設立。情報発信と介護事業者に特化したウェブ制作サービスを行う。