訪問介護事業所の未来は、まさに「鬼ハードモード」。介護報酬減の影響や人材確保の課題から、多くの訪問介護事業所が休廃業している厳しい現実があります。
この状況下で、訪問介護事業所が事業継続するためには、単なる現状維持ではなく、新しい方向性を模索し、変化に対応していく必要があります。その中でも特に重要なのが「人材採用の成功」です。
訪問介護事業の未来を切り開くための方向性を示し、その実現手段として、ホームページを活用した採用戦略のヒントを具体的にご紹介します。
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1. 訪問介護業界に迫る危機

訪問介護事業所を取り巻く環境は、年々厳しさを増しています。東京商工リサーチの調査によれば、2024年の休廃業612件のうち、実に7割が訪問介護事業所でした。この数字は、業界全体が深刻な危機に直面していることを物語っています。
参照:yahooニュース:介護事業者の休廃業、昨年612件で最多に 訪問介護が7割超す
1-1. 人材不足が深刻化
介護業界全体で深刻な問題となっているのが、言うまでもなく「人材不足」です。少子化の影響で労働力人口が減少している中、訪問介護分野では特に採用難が顕著です。有効求人倍率は他業種に比べて非常に高く、求人を出しても応募が集まらない状況が続いています。昨年の訪問介護の求人倍率は14.14倍。14事業所が募集を出していて、採用できる事業所がひとつあるかどうかという状況で、まさに人材採用は鬼ハードモードです。
参照:Joint-kaigo:訪問介護のヘルパーの有効求人倍率、昨年度は14.14倍 厚労省「非常に厳しい状況」
さらに、現場では人手不足による業務の過重化が進み、スタッフの離職率が高まるという負のスパイラルが発生しています。このままでは、事業の継続すら危ぶまれる状態です。
1-2. 経営環境の悪化
最低賃金の上昇や物価高騰も、事業所の経営を圧迫する要因となっています。特に小規模事業所では、固定費の増加を吸収する余力がなく、廃業に追い込まれるケースが増えています。ホームヘルパーが移動するために必要なガソリン代や、事業所の光熱費、ICT機器などの導入・維持管理費など、経営コストを圧迫しています。
さらに、2024年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬が引き下げられるなど、経営環境は一層厳しさを増しています。処遇改善の見直しや補助金で職員の待遇が改善される期待はあるものの、それを支える事業所の経営が維持できなければ何も残りません。
1-3. 競争の激化と地域格差
大手法人の市場参入が進む中、小規模事業所が淘汰される流れが加速しています。また、都市部と地方でのサービス需要や人材確保の難易度に格差が広がり、特に地方の事業所はサービスの提供自体が困難になりつつあります。
特に地方では、訪問介護の事業所がひとつもない「空白地帯」市町村が増えていることも大きな問題となっています。
これらの状況を見るだけでも、訪問介護はかつてない苦境に立たされていることがわかるでしょう。今後、訪問介護事業所が生き残るためにはどうしたらいいのでしょうか。
2. 訪問介護事業継続のための方向性

維持は停滞、停滞は衰退につながる
これまで、訪問介護には大きな逆風が何度もありましたが、「現状維持」で乗り越えてきた事業所もあるのかもしれません。小規模の介護事業所の多くは、利益を急拡大することを望まず、地域に根付いて、信頼と安定性を求める心理が強くあったかもしれません。
しかし、この現状を踏まえると、現状維持は実質的に停滞を意味し、結果的には衰退を招くリスクが高いのです。これを克服するためには、新しい方向性を模索し、「スケールメリットの追求」や「新規事業への参入」を目指す必要があります。
2-1. スケールメリットの追求がもたらす安定
今後、訪問介護事業所の安定経営には、規模の拡大が欠かせなくなるでしょう。小規模事業所では、以下のような限界に直面します。
- 固定費や人件費の割合が高く、経費削減の余地が少ない。
- スタッフ不足がサービス提供の制約となる。
一方、規模を拡大することで、以下のようなスケールメリットが得られます。
- コスト効率の向上:リソースを複数拠点で共有し、経費を分散。
- スタッフの効率的な配置:エリア全体を見据えた柔軟なシフト運用。
- 加算取得による収益拡大:職員配置により特定事業所加算を取得、報酬を最大化。
事業所の規模を拡大するだけでなく、近隣地域への拠点展開や広域サービスの提供は、利用者を増やし、経営の安定化につながります。介護保険制度は大規模事業所優位の制度の性格をますます強めています。スケールメリットはまさに生命線になるでしょう。
2-2. 介護保険外サービスへの参入
介護保険だけに依存する経営は、報酬改定の影響を受けやすく、収益の不安定化を招きます。これを補うためには、介護保険外サービスを本格的に取り入れることで収益源を多様化する必要があります。
- 家事代行や見守りサービス:高齢者だけでなく、その家族のニーズにも応える。
- 地域との連携イベント:地域社会全体を巻き込んだ事業展開で、新しい収益機会を創出。
これらのサービスは、高齢者本人だけでなく家族や地域にも価値を提供し、新たな市場を開拓できます。また、介護という固定された視点ではなく、もっと広い視野で新たな着眼点からまったく新しいビジネスを開拓していく可能性もあります。幸い、多くの利用者やその家族と接点を持つ訪問介護事業所。ビジネスチャンスの芽を探すことも重要です。
2-3. これらの戦略を実現する鍵は「人材」
スケールメリットを追求するにしても、新規事業を展開するにしても、すべての基盤となるのは「人」です。十分な人材が確保できなければ、事業の拡大もサービスの質向上も実現不可能です。
人材採用が成功すれば:
- 拡大による新たな利用者獲得が可能に。
- 新規事業展開での業務を担えるスタッフが確保できる。
- サービスの質が向上し、地域内での信頼が高まる。
いずれにせよ、事業の成長に向けた「変化」を起こすためには、まず人材を確保することが最優先です。
採用が成功しなければこれらの戦略も、次なる一歩も実現しません。
次のセクションでは、この「採用成功」を実現する手段として、ホームページを活用した具体的な採用戦略をご紹介します。
3. ホームページを活用した採用戦略

訪問介護事業所が人材採用を成功させるためには、ホームページを効果的に活用することが欠かせません。広告やメディア戦略など、物量に勝る大手事業者に対抗するためには、戦略的にホームページを活用していくことが不可欠です。
求職者が最初に触れる情報源としての役割を果たすだけでなく、事業所の魅力を最大限に伝え、採用を成功しましょう。このセクションでは、採用に特化したホームページ運用の具体的なポイントをご紹介します。
3-1. 採用特化ページを追加する
ホームページ上に「採用ページ」を設けることは、人材採用における基本です。事業所のホームページと分けて、採用専用サイトを制作する事業者も増えています。サービス内容の情報を求める利用者やケアマネジャー・関係事業者を対象にしたホームページと、採用に特化したホームページを分けることで、ターゲットにマッチした情報を提供できます。
もちろん、採用専用サイトを別に作ることで追加のコストが発生することや、デザイン・ユーザビリティの統一感が失われることなどのデメリットもあります。採用専用サイトを作らないとしても、採用のためには求職者をターゲットにした情報・コンテンツを作ることが重要です。以下のような情報を伝えていくことをお勧めします。
- 事業所のビジョンとミッション
- 「なぜこの仕事が重要なのか」「どのような未来を目指しているのか」を明確に伝える。価値観を共有できる仲間を探すことを意識しましょう。
- スタッフインタビューや1日のスケジュール
- 実際に働くスタッフの声や、具体的な1日の業務内容を紹介。求職者が働くイメージを持ちやすくします。
- キャリアパスやスキルアップの機会
- 資格取得サポートや資格手当などの情報を出すことももちろんですが、「この仕事を通じて成長できる」「ここでの経験は自分のキャリアには必要だ」と思わせ、期待感を持たせることも重要です。
スタッフインタビューの作り方はこちらの記事に動画とともに掲載していますのでご参照ください。
3-2. 応募しやすい仕組みづくり
応募へのハードルを下げることは、求職者を惹きつける重要なポイントです。以下の工夫を施しましょう。
- 応募専用フォームの設置
- お問い合わせフォームとは別に、応募専用フォームを用意します。採用情報のページに採用専用フォームがあれば、すぐに応募や問い合わせというアクションにつながります。
- LINEやSNSのDMでの応募受付
- フォーム以外にも、公式LINEやSNS経由で簡単に応募できる選択肢を用意し、柔軟性を持たせます。応募をより「カジュアル化」することでハードルを下げる効果があります。
3-3. 視覚的な魅力を伝える
求職者に「ここで働きたい」と思わせるには、視覚的な訴求力が重要です。以下のポイントを押さえましょう:
- 職場の雰囲気を伝える写真や動画
- 職場の日常風景や雰囲気を撮影し、ページに掲載すると、そこで働いている自分自身の姿をイメージしやすくなります。
- 職員の写真を掲載するか、AIを活用することもOK
- 職員の写真を掲載するとより親近感が生まれ、イメージを持ちやすくなります。ただ、抵抗を感じる職員も多いと思いますので、そこにトラブルのきっかけを生じるリスクがあったり、労力を費やす可能性があるのであれば、AIで疑似職員の画像を生成することもひとつの方法です。
3-4. SEO対策とSNS連携
「ただそこにあるだけ」ホームページでは多くの求職者を集めることはできません。検索エンジンやSNS活用などの戦略も不可欠です。
- SEO対策
- ブログを活用して、事業所が取り組んでいることなどを公開していきましょう。興味を持つ人が検索エンジン経由で集まります。アクセスを増やすことが目的ではなく、届いてほしい人が必要としている情報を発信する。結果的にそれがSEO対策になります。
- SNSとの連動
- X(twitter)やInstagramなどで、スタッフの日常や思いなどを発信し、求職者が親しみ・親近感・共感を持ってもらえるようにする。
一例でさわりだけを書きましたが、どんな人と一緒に働きたいか、どんな事業所を目指したいか、どんな社会を目指したいか、というところから検討していくことで、とるべき戦略が明確化するでしょう。
まとめ: 採用成功が未来への第一歩
訪問介護事業所が成長を目指す上で、「スケールメリットの追求」や「新規事業への参入」は重要な戦略です。しかし、それを支える根幹には「人材採用の成功」があります。
ホームページは、採用活動の中心的なツールとして活用することで、人材確保から事業拡大までを一貫して支える力となります。今すぐ採用のためのコンテンツを整備し、新しい未来を切り開くための一歩を踏み出しましょう。
訪問介護事業所のみなさまを対象に、コストの部分で貢献できる初期費用のキャンペーンなども計画中です。まだ準備段階ですが、ご相談いただければ提案できる内容もあると思いますので、気軽にお問い合わせください。