2025年、介護事業所の経営環境はこれまで以上に厳しくなっています。
人手不足、物価高、職員の負担増、利用者の重度化…。どの事業所でも共通する課題が積み重なり、「このまま続けられるのか」と不安の声が増えている状況です。
こうした問題に対応するため、国は 令和7年度補正予算で「医療・介護等支援パッケージ(介護分野)」2,721億円 を組み、幅広い支援策をまとめて発表しました。
詳細についてはこちらのPDF資料をご参照ください。

今回のパッケージは、単なる賃上げ支援だけではありません。
介護職の処遇改善、事業所の運営支援、訪問介護や居宅介護支援の体制づくり、ICT導入、広報・経営改善など、事業所の状況に合わせて使える支援が示されています。
ここでは、全体像をわかりやすく整理し、事業所としてどう備えていくべきか、どんな未来が待っているかを解説します。
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2025年「医療・介護支援パッケージ」の全体像──4つの柱で介護分野を支える仕組み
今回の「医療・介護等支援パッケージ(介護分野)」は、介護職員の処遇を改善し、介護事業所の運営を幅広く支えるために、4つの大きな柱で構成されています。
どれも今の介護現場で起きている課題に直結する内容で、事業所に必要な支援をまとめて受けられるように設計されています。

① 介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善に対する支援(1,920億円)
もっとも大きな予算が割かれている部分です。
いわゆる“3階建ての賃上げ”がここに含まれています。
- 月1万円の幅広い賃上げ(介護職・ケアマネ・訪問看護など)
- 生産性向上に取り組む事業所への+5千円
- 職場環境改善に取り組む事業所への+4千円(賃上げ以外にも使える)
人材確保が難しくなる中で、働く人の待遇改善を強力に後押しする仕組みです。
② 介護事業所・施設のサービス継続に対する支援(278億円)
物価高騰や備品費の上昇など、日常運営に直結する負担を軽くするための支援です。
- 物価高に対応するための衛生用品・送迎やサービス提供に必要な購入などの支援
- 食費の支援
- 修繕・改修などにかかる費用の支援
事業所の経営状態悪化を避けるための支援で、特に小規模事業所にとって大きな助けになります。
③ 介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等に対する支援(220億円)
ICT・記録ソフト・見守り機器など、生産性向上に必要な投資をサポートします。
- ICT機器・ソフトの導入
- 見守りセンサー・タブレット
- 業務の協働化・大規模化に向けた準備
- 小規模事業所の経営改善支援
訪問系・通所系では、「ケアプランデータ連携システム」が賃上げ要件にも関わるため、ここは特に注目です。
④ 訪問介護・ケアマネジメントの提供体制確保に対する支援(56億円+14億円)
訪問介護と居宅介護支援に分かれていますが、どちらも事業所運営を持続可能なものにすることを目指しています。
訪問介護への支援
深刻な人手不足を背景に、特に中山間地・人口減少地域のサービス提供体制維持を重点支援
居宅介護支援への支援
ケアマネ事業所の減少に対応するため、人材確保・負担軽減・経営改善を支援
全体を通して見えること
今回のパッケージは、賃上げ・設備・ICT・訪問介護・居宅介護支援を一体的にサポートする「総合パッケージ」です。
単発の補助金ではなく、事業所が「今必要な支援」をまとめて受け取れる設計になっています。
今回の支援パッケージのうち、賃上げ部分をAIでインフォグラフィック・図解化しておりますので、ぜひご確認ください。

介護従事者の賃上げは「最大1.9万円」。3階建ての仕組みと要件をわかりやすく解説
今回の補正予算の中で、もっとも大きな規模となっているのが、介護従事者の賃上げ・職場環境改善の支援(1,920億円) です。
人材不足が深刻化する中で、「介護現場で働く人の待遇改善」を強く後押しするためのものです。
今回の賃上げは “3階建て” と呼ばれる仕組みで設計されています。
大事なのは、どこまでが対象で、何が要件になるのかを正確に把握しておくことです。

✔ 1階部分:幅広い介護従事者に 月1万円 の賃上げ
まず、もっともベースとなるのが 月額1万円の賃上げ。
ここには介護職員だけでなく、
- ケアマネジャー(居宅・施設)
- 訪問看護の専門職
- 生活相談員
- サービス提供責任者
など、幅広い職種が含まれています。
ただし、この1万円の賃上げを実現するには 重要な要件 があります。
といっても、居宅介護支援事業所には「ひとり社長ケアマネ」のような事業所もたくさんあるわけです。それなのに処遇改善って。
そのために書類作成などの整備をしなければいけないって、おかしくないですかね。
✔ 2階部分:生産性向上に取り組む事業所に +5千円
2階部分は 介護職員のみ が対象です。
ここでは、「これからの介護現場に必要な取り組み」を進めている事業所を評価する形になっています。
訪問や通所系の事業所がケアプランデータ連携システムを導入したとしても、肝心の居宅介護支援事業所や地域包括が導入していなければ、ただただ無用の長物。どちらかというと先に居宅や包括に普及させるべきなんじゃないかと思うのですが。
今はフリーパスキャンペーンの適応があるから無料で始めることはできますが、連携先がなければただコストを浪費するだけのものにしかなりません。
✔ 3階部分:職場環境改善などに取り組む事業所に +4千円
3階部分では、取り組みの幅が広く、
賃上げ以外にも活用できる柔軟な支援となっています。
例えば、新人育成の研修、事務効率化のための物品、職員の働きやすい環境づくりなどが対象になります。事業所に裁量が委ねられるため、このバランス感覚も非常に重要です。
✔ まとめ:介護職員は最大1.9万円、ケアマネは最大1万円
3階建てをすべて活用した場合、賃上げ額は以下の通りです。
- 介護職員:最大1万9千円
- ケアマネジャー・訪問看護等:1万円(1階部分のみ)
特にケアマネについては、「1万円のために新たな計画書・報告書を求められる」など、負担とのバランスに疑問の声もあがりそうな仕組みです。
今回の賃上げは、単に給与を上げるための支援ではなく、ケアプランデータ連携システムや処遇改善加算取得など、国が推進する政策メニューを普及するためパッケージとも言えるでしょう。
介護事業所・施設のサービス継続を支える支援──物価高の中でも運営を続けるために
今回のパッケージには、事業所が提供するサービスを維持するための支援も含まれています。
物価高や備品の値上がりが続く中、日々の運営に欠かせない経費を補えるように設計されています。
この支援は、介護事業所や施設が直面している次のような状況をふまえて用意されています。
1つ1つを見たら小さな金額かもしれないですが、日々積み重ねると大きなコストになり、それが経営を大きく圧迫しているのが事実です。
それを補助するための物価高対策メニューと言えます。

✔ 支援の対象になる経費(例)
今回、補助の対象となる経費は幅広く、実際の介護現場で必要になるものが中心になっています。
- 衛生用品・消耗品の購入費
→ マスク、手袋、消毒用品など - 設備・備品の購入費
→ ベッドや車いす、事務備品、ケア用品など - 送迎やサービス提供に必要な物品
→ 車両の整備費、タイヤ交換、給油の負担増への対応 など - 災害対策の物品・設備
→ 非常用電源、蓄電池、備蓄品、防災用品
日常のサービス提供に直結する部分を幅広くカバーした内容となっています。これ以外にも食費を対象にしたメニューも加えられています。

また、老朽化した施設の修繕などを行う際の交付金メニューも加えられています。特に建築資材などの値上がりも大きく、災害のニュースの多い中、大きな支えになります。

サービスを継続するための事業所支援
賃上げやなどに比較すると、どちらかというと「守り」の支援メニューと言えます。
近年、多くの事業所の経営状況が悪化し、過去最大の倒産ペースを更新し続けています。サービス継続支援のメニューは、どんな事業所でも使いやすく、実用度の高いメニューです。
介護テクノロジー導入・協働化・経営改善の支援──働き方とサービスの変革へ
今回のパッケージには、ICT導入や業務の効率化を後押しするための支援も含まれています。
介護現場は、人手不足が続く中で、これまでと同じサービスを継続することが難しくなっています。
その課題解決のために用意されたのが、介護テクノロジー導入・協働化・経営改善支援(220億円) です。
この支援は、単に機械やソフトを購入するための補助ではなく、働き方の改善や事業所の負担軽減を目的としています。

✔ ICT・介護テクノロジーの導入支援
現場の負担を軽くするために、さまざまな機器やサービスが補助の対象になります。
- 介護記録ソフトの導入
- ICT・センサー等の介護テクノロジー活用
- 書類作成や情報共有の効率化
- 事務作業の省力化 など
紙やエクセルで残してきた記録をICT化する流れは、今後さらに強まります。
日々の業務負担が軽減され、ミスの減少や利用者対応の時間確保にもつながります。
✔ 協働化・大規模化への支援
今回のパッケージでは、事業所協働化・大規模化も推進しています。
- 複数事業所の共同購入
- 共同で使える事務機能の整備
- ケアプランデータ連携システムなどを活用した経営改善モデル事業の実施
など、地域の事業者同士で協力して行う取り組みも対象。
事務作業や記録作成などを“協働”で進めることで、ひとりひとりの負担を減らし、働きやすさの改善をめざす仕組みです。
✔ 経営改善に向けた支援
小規模事業所ほど負担が重くなりがちな「経営改善」についても補助対象が用意されています。
- 外部コンサルタントの派遣
- 経営課題の整理や改善計画の策定支援
- 生産性向上策の専門的助言
など、経営の中身そのものに踏み込んだ改善支援。
経営課題は事業所ごとに違いますが、必要に応じて柔軟に活用できるのが特徴です。
✔ これらの支援が重視されている理由
介護テクノロジーや協働化が強調される背景には、深刻な人手不足があります。
より少ない人手でも、IT・協働化・仕組みの見直しで効率化し、負担を減らす考え方が前面に出ています。
多かれ少なかれ、ICT化による効率化は避けることができないでしょう。
いかに現場が抵抗感なく導入でき、それを実用・改善していけるかという点がポイントになりそうです。
国がモデル事業所やICT化支援団体等をよりPRし、効率的な働き方をイメージできるようにすることが必要でしょう。
訪問介護・ケアマネジメントの提供体制を守るための支援
令和7年度補正予算には、訪問介護とケアマネジメントの提供体制を維持するための複数の支援策が含まれています。
特に事業所数が激減している訪問介護と居宅介護支援を支援することで、特に中山間地域・人口減少地域などでも介護サービスの基盤を維持することが重視されます。

訪問介護サービスの提供体制を守る支援(56億円)
訪問介護サービスは、燃料費の高騰や深刻な人手不足の影響を強く受けており、
特に中山間地域や都市部の小規模事業所では提供体制の維持が難しくなっています。
このため国は、都道府県・市区町村が地域の状況に合わせて柔軟に支援できるよう、
次の3つの取組を支援します。
① タスクシェア・タスクシフトの推進
訪問介護事業所だけでは担いきれない業務を、地域の多様なリソースと協働して支える仕組みを整えます。
役割分担や連携ルールづくりが支援対象です。
② 中山間地域などでの訪問機能の追加支援
訪問介護事業所が存在しない地域では、通所介護事業所などが訪問機能を担う多機能化が求められます。
この機能追加に必要な初期費用の一部や、導入に向けた伴走支援を行います。
③ サテライト(出張所)の設置支援
中山間地域の需要に応じて柔軟に人員を配置できるよう、訪問介護の拠点を分散させる取り組みです。
サテライト設置に伴う初期費用、設備整備などが一定期間支援されます。
補助対象経費
訪問介護の人材確保・経営改善、地域の在宅サービス提供体制づくりが進むことで、
地域での訪問介護の継続・安定につながるとされています。
地域のケアマネジメントを支える支援(14億円)
ケアマネジャーの役割は年々重要性を増していますが、
一方でケアマネジャー数の減少や高齢化が進み、地域によっては担い手が不足しています。
このため国は、都道府県が地域の実情に合わせてケアマネの確保・定着を支援し、業務の負担軽減ができるよう、以下の取り組みを支援します。

① 介護支援専門員人材確保支援事業
- 中山間・離島等地域における採用活動
- 「潜在ケアマネジャー」の実態把握や事業所とのマッチング、復職後の相談対応や環境整備の支援
② 介護支援専門員業務負担軽減支援事業
- 事務職員の採用や研修の支援
- 公共的な団体による業務の受け皿創設支援
- シャドウワークに関する相談窓口の設置
③ 居宅介護支援事業所経営改善支援事業
- コンサルの派遣による、加算の新規取得や職員の待遇改善、大規模化・協働化等の経営改善支援
- 利用者確保のための広報活動支援
人材確保・負担軽減・経営改善を進めることで、ケアマネジメントの維持を目指しています。
以上、ここまで医療介護等支援パッケージの内容を紹介しました。
今回の政策パッケージは2026年臨時改定への布石
今回の支援パッケージは、表向きは令和7年度の「期間限定」施策として位置づけられています。
しかし、その中身を見ると、単に今だけの補助ではなく、明らかに2026年の臨時介護報酬改定へとつながる方向性が示されています。生産性向上、協働化、業務負担軽減、ケアマネジメント体制の強化など、すでに検討会で繰り返し議論されてきたテーマが、補正予算という形で先行して実装された形です。
つまり今回の支援は、特別な一時金ではなく、これからの介護業界が向かう大きな流れを示すための布石だと読み取れます。この数ヶ月でどれだけ体制を整えられるかが、次の報酬改定で優位に立てるかどうかを左右します。
これからの事業所に求められる姿は明確です。
ICTや介護テクノロジーを導入して業務を見直し、協働化や大規模化を視野に入れながら、現場スタッフの負担を減らし、本来のケアに集中できる体制をつくっていくこと。
また、経営改善を進めつつ、採用・人材確保ができる体制を整えること。
そのメッセージが明確された形になります。
地域における提供体制を維持するための仕組み作りができているかどうかが、報酬にも評価にも直結していく時代になります。
そう考えると、今回のパッケージは「補助金が出るから使う」ではなく、「これからの数年で求められる要件を先に整える機会」として捉えるのが自然です。
正直、ここまで複雑なメニューになるとは思いませんでした。普通に報酬増やせばいいだけの話が、こうなってくると、どのメニューがどういうときに使えるのかと、わからなくなり、予算が消化されないようになる可能性もあります。
国としては、支援した形を残しつつも、一方では過度に使われないようにわざとわかりにくくしている面もあります。しっかり情報をキャッチし、活用していける事業者になる必要があります。
ホームページ制作を通してできること
今回の政策パッケージのなかにも、
「訪問介護サービスの経営改善」としての広報活動に関する支援
「通所サービス事業所の訪問機能追加」の初期費用としてのホームページ改修
「居宅介護支援事業所の経営改善」利用者確保のための広報活動支援
等のメニューがありました。
国も、事業所がホームページ等での発信力を持つことが経営面での大きな力になることを確信しています。
私たちウェルコネクトでは、今回の支援パッケージと2026年改定の方向性を踏まえたうえで、事業所が取り組むべきポイントを整理し、次のような支援を提供できます。
- 採用・広報に強いホームページの新規作成・リニューアル
地域の人材・利用者に「選ばれる」情報発信を設計。 - AI・ICTを活用した業務効率化支援
ケアマネや訪問介護の事務負担の軽減、業務整理
通所事業所が訪問事業をスタートする際に、ホームページ上にどんな情報を追加すればいいのか、何を発信すればいいのか、といった相談にもお答えします。
制度の方向性を読み解きながら、事業所が新しいフェーズに進めるよう伴走いたします。
ぜひ相談はお気軽に(堅い話ばかりですいませんっ!)。

編集:
介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト編集部(主任介護支援専門員)
ケアマネジャーや地域包括支援センターなど相談業務に携わった経験や多職種連携スキルをもとに、介護福祉専門のウェブ制作ウェルコネクトを設立。情報発信と介護事業者に特化したウェブ制作サービスとAIを活用した業務改善提案を行う。










