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〜介護予防ケアプランの書式にみる“現場と理念”のズレ〜
実務者研修を修了して
ケアマネ実務者研修を修了しました。
詳しい研修の様子などは、併設サイト「ケアマネジャム」でまとめていますが、ここでは最終日の講義について少し書きたいと思います。
最終日は「介護予防ケアプランの作成」に関する演習を含む講義。
受講を終えたあと、なんとも言えない消化不良の感覚が残りました。
というのも、この研修を修了すれば、皆もうケアマネとして現場に出ていくわけですが――その最終日に触れた“書式”に、どうしても引っかかるものがあったからです。
「利用者本位」と言いながら、利用者が置いてきぼり
介護予防ケアプランは、当然「利用者本人の意欲や自主性」を重視した、利用者中心の計画書であるべきです。
しかし実際に提示された書式を目にした瞬間、違和感がありました。
A3の用紙に、細かな罫線がびっしり。
文字は豆粒のように小さく、項目ごとに「課題」「目標」「根拠」などが詰め込まれている。
──これ、本気で利用者に見せるつもりなのか?
「利用者視点」「利用者本位」という言葉を何度も聞いたあとにこの書式を見ると、正直、どこをどう見ても“利用者が中心”とは思えませんでした。
計画書を作る側の都合、事務的な効率、法定様式の縛り。
それらが、理念を覆い隠してしまっているように感じたのです。
制作の立場から見た「設計」の欠落
私はウェブ制作の仕事もしています。
サイトを作るときには、まず「誰が・どんな環境で・どんな目的で」そのページを見るのかを考えます。
ショッピングサイトであれば、購買行動や導線設計を重視し、自治体や医療介護のサイトなら、利用者の理解度や視覚特性に配慮してデザインします。
ところが、介護予防ケアプランの書式には、そうした“設計思想”がほとんど見えません。
誰のための情報なのか、どう伝わるべきなのかという観点が抜け落ちているように思えます。
言葉では「利用者中心」と繰り返しながら、フォーマットのデザインは依然として“事業者中心”のままなのです。
「慣れ」の中に埋もれた課題
もしかすると、そこには「慣れ」の問題もあるのかもしれません。
これまでの業務様式や行政フォーマットに慣れきってしまい、利用者と共に計画書を“見る”という発想自体が薄れている。
でも、それこそが「利用者本位」を阻む最大の壁のようにも感じます。
書式の改善は些細なことに見えるかもしれませんが、利用者とのコミュニケーションを形づくる大切な接点でもあります。
もし、利用者が見て理解できるフォーマットであれば、ケアマネジメントの会話そのものがもっと開かれたものになるはずです。
“見やすさ”から始まるケアマネジメント改革
ウェブの世界では、「見やすさ=信頼される設計」というのが基本です。
介護現場も同じ。
利用者の視点で見てわかる計画書をつくることは、ケアマネジメントそのものを透明にし、利用者との協働を支える第一歩だと思います。
利用者本位を掲げながら、いまだにその形に馴染めていない――。
そんな介護業界の現実を、今回の研修で改めて突きつけられました。
まとめ
ケアマネとしての学びの場は多くの気づきを与えてくれます。
しかし、「制度に沿う」だけで終わらせず、「誰のためにこの書類があるのか」を常に問い直す姿勢が必要です。
ケアプランの“見た目”から、ケアの“本質”を見直す。
小さな違和感からこそ、次の改善が始まるのかもしれません。
※この記事は2008年5月の記事を一部加筆修正しております。

編集:
介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト編集部(主任介護支援専門員)
ケアマネジャーや地域包括支援センターなど相談業務に携わった経験や多職種連携スキルをもとに、介護福祉専門のウェブ制作ウェルコネクトを設立。情報発信と介護事業者に特化したウェブ制作サービスとAIを活用した業務改善提案を行う。







“ケアマネ実務者研修を終えて感じた「利用者本位」の空洞” への1件のフィードバック