介護保険の制度改定が4月1日に行われます。
今回の制度改定については、報酬単価や加算が変更されるだけでなく、運営基準が大きく変わるものがあり、マニュアル等の書類作成や委員会の開催、膨大な負担が発生する印象です。
詳しくはこちらの記事で。
書類負担を軽減するといいながら、どんどん増えていく書類・書類・書類。
一貫性のない制度改正を続けているのがそもそもの問題なんでしょうけれど。百歩譲って仕方ないものとしても、アナウンスのタイミングが遅すぎますよね。
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居宅介護支援特定事業所要件に追加された「インフォーマルサービス要件」
さて、今回注目したいのは居宅介護支援事業所の制度改定についてです。
今回の改定で、ケアマネ事業所のうち、特定事業所(人員要件や研修体制などが基準を満たす事業所)に関して、このような要件が加わりました。
必要に応じて、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービスが包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること
多様な主体により提供される・・・。なんだ?多様な主体って・・・。
これ、いわゆるインフォーマルサービスを含めた多様なサービスっていうやつです。
ここ数年のトレンドとして、ケアマネジャーは介護保険サービスなどの保険サービスだけでなく、インフォーマルサービスもケアプランの中に組み込むべきだ、なんて論調が強くなっています。
当のケアマネとしたら、ケアプランにインフォーマルサービスしか組み込まないプランで介護保険サービスの給付が発生しない場合は一円ももらえません。
インフォーマルサービスばかり推奨するこの風潮は、ケアマネをタダ働きさせることを推奨しているようなもので。
今回その延長上で、特定事業所のケアマネはインフォーマルサービスなどの多様な主体によるサービスもケアプランに組み込みなさいよ、という条件が付与されました。
「インフォ―マスサービス要件」なんて言われています。
そこで、疑問が・・・。
インフォーマルサービスってどこからどこまでをいうの?
インフォーマルサービスって何?
インフォーマルサービスの定義
そもそもインフォーマルサービス、インフォーマルサービスっていうけど、そもそもインフォーマルって何よ。
インフォーマルといえば、フォーマルじゃない。つまり「非公式」というもの。
当然、介護保険サービスや医療サービスなどは公式のサービスですよね。行政サービスも公式。フォーマルサービスです。ふむふむ。
じゃあ、訪問マッサージはインフォーマルサービス?いや、医療保険の対象にもなっているし、法人が指定を受けているんだからそりゃフォーマルでしょ。
じゃあ、民間の配食サービス業者とか、家事代行業者とか、訪問美容のお店とかは、インフォーマルサービスかな?いや、どれも公式な組織として運営しているし、株式会社や個人事業主など、フォーマルな存在だよね。
それがNPOとかだったら?もちろんこれもフォーマルですね。非営利であっても組織されて認められた法人である以上はフォーマルになる。
じゃあ、自治会や老人会、地域のサロンとかはインフォーマル?これも当然地域の中の組織だし、行政からの助成金をもらって活動しているから当然「フォーマル」。
ぬぬぬ・・・。インフォーマルだと思っていたものが、みんなフォーマルだったことに気が付きます。
本来の意味でインフォーマルな存在としていえるのは、
・飲み仲間
・立ち話をするご近所さん
・麻雀仲間
・同じ宗教を信仰する仲間
・家族や親族
などじゃないでしょうかね。
今回、Q&Aで実はこんな質問があったようです。
○ 特定事業所加算
問 114 特定事業所加算(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)及び(A)において新たに要件とされた、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービスとは具体的にどのようなサービスを指すのか。(答)
令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)(令和3年3月26日)
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(平成 11 年7月 29 日老企第 22 号)3⑺④を参照されたい。
≪参考≫
・通知:第2の3⑺④
居宅サービス計画は、利用者の日常生活全般を支援する観点に立って作成されることが重要である。このため、居宅サービス計画の作成又は変更に当たっては、利用者の希望や課題分析の結果に基づき、介護給付等対象サービス以外の、例えば、市町村保健師等が居宅を訪問して行う指導等の保健サービス、老人介護支援センターにおける相談援助及び市町村が一般施策として行う配食サービス、寝具乾燥サービスや当該地域の住民による見守り、配食、会食などの自発的な活動によるサービス等、更には、こうしたサービスと併せて提供される精神科訪問看護等の医療サービス、はり師・きゅう師による施術、保健師・看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練なども含めて居宅サービス計画に位置付けることにより総合的な計画となるよう努めなければならない。
なお、介護支援専門員は、当該日常生活全般を支援する上で、利用者の希望や課題分析の結果を踏まえ、地域で不足していると認められるサービス等については、介護給付等対象サービスであるかどうかを問わず、当該不足していると思われるサービス等が地域において提供されるよう関係機関等に働きかけていくことが望ましい。
・・・?
・市町村保健師等が居宅を訪問して行う指導等の保健サービス
・老人介護支援センターにおける相談援助及び市町村が一般施策として行う配食サービス、寝具乾燥サービス
・当該地域の住民による見守り、配食、会食などの自発的な活動によるサービス等
・精神科訪問看護等の医療サービス
・はり師・きゅう師による施術、保健師・看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練
全部ゴリゴリのフォーマルサービスじゃないか。インフォーマルサービスの例なんてひとつもない・・・。
インフォーマルサービス、インフォーマルサービスってさかんに言われているけれど、そもそもインフォーマルサービスなんて実態がないものが、お題目のように独り歩きしているんです。
おかしいと思いません?
研修とかで「インフォーマルサービス」とかって言う奴がいたらシバいてやりたいですね。
地域によって「多様な主体」の考え方が異なる?
正体の見えない「多様な主体」。
とらえ方はおそらく地域によって異なると思われます。
横浜市ではこのように記載しています。
多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービスとは、介護給付等対象サービス(介護保険法第24 条第2項に規定する介護給付等対象サービスをいう。)以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等のことをいう。
横浜市ホームページ 特定事業所加算にかかるチェック表より
つまり、介護保険以外だったら何でもあり、ということですね。
保健医療サービスということであれば、通院先でもいいわけですね。
うん、じゃあ全部のプランに
保険証発行→行政サービス→〇〇市
って入れておけば要件満たすってことですね。
はい終了。
はっきり言って無意味ですよ、こんな改正。
インフォーマルサービスをケアプランに多く書き込んだらそれが優れたプランなのかって、そんなものじゃないでしょ。
本人の想いや価値観をいかに反映させることができるか、これからの人生をポジティブに生きるための材料になるかどうか。それが大事なんじゃないですかね。
何行書いてあればいい、というものではなく、どうしたら伝わるかの方が大事なので、混乱させないように、あえて書く内容を絞るケアプランだって必要だと思うんですよ。
ということで、今日はケアプランにおけるインフォーマルサービスについて思っていることを書いてみました。