介護保険制度改正・介護報酬改定に関する様々な情報が飛び出してきていますが、細かい改正点が非常に多く、これを全部追って対応するのはかなり労力が必要になりそうです。
運営基準に適応しているかどうか、自治体等の発行するチェックリストなどで確認することが必要になりそうですね。
そんな中、介護事業専門のホームページ制作業者として皆様にお知らせしなければいけない情報がありますので、皆様に報告します。
かいつまんで説明すると、
ホームページ上もしくは介護サービス情報公表システム上に重要事項説明書の掲載が求められることになりそうです。
記事の概要はこちらの動画にまとめていますので、ぜひこちらもご参照ください。
動画作るの結構大変だった・・・。ときどき動画も作成してアップしようと思います。
※後半では実際に義務化がスタートした2025年現在の状況について、クライアント様から伺った声なども含めて紹介します。
この記事のコンテンツ
厚生労働省、社会保障審議会介護給付費分科会での「書面掲示」規制見直し
介護保険制度改正に関する議論が行われる厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会でこのような意見が「しれっと」出されました。

論点⑤
◼ 運営基準省令・解釈通知上、事業所の運営規程の概要等の重要事項等(※)については、原則として事業所内での「書面掲示」を求めている一方、備え付けの書面(紙ファイル等)又は電子機器による電磁的記録の供覧により、書面による壁面等への掲示を代替できる規定になっている。
※ 事業所の運営規程の概要等の重要事項、居室及び食堂の広さ、届出事項、特別な食事の提供に係る情報(内容及び料金等)、移動用リフト使用時の留意事項等
◼ インターネット上での情報の閲覧の完結等を求める「デジタル原則」の考え方を踏まえ、事業所の運営規程の概要等の重要事項等を供覧する方策について、どのように考えるか。
第233回社会保障審議会介護給付費分科会資料「人員配置基準等」より
介護保険指定事業所では、事業所内の目につくところに「重要事項等」を掲示しなければいけないルールになっていますので、みなさまの事業所内にも書面の掲示がしてあることかと思います。この書面掲示について、デジタル原則の考え方を踏まえて、インターネット上で掲示する必要はないのか、というものです。
これに対する回答はこうです。
対応策
◼ インターネット上で情報の閲覧が完結するよう、介護サービス事業者は、従来の「書面掲示」に加え、原則として重要事項等の情報をウェブサイト(法人のホームページ等又は情報公表システム)に掲載・公表しなければならないこととしてはどうか。その際、一年間の経過期間を設けてはどうか。
ということで、これまでの書面掲示に加えて、法人ホームページ上もしくは情報公表システム上に情報を掲載・公表しなければいけないという案が示されました。
みなさん多分思うところは同じだと思うのですが。
- 誰も見ねーよ。
現在の介護業界は法人ホームページよりも採用ホームページに力を入れる傾向が強く、ターゲットは利用者やご家族というよりも、求職者に向いているような印象を強く感じています。果たしてその状況下で、重要事項説明書を見る人がどれだけいるのかと。

ただ、今回の審議会では「しなければならない」という強い表現をしているので、これはおそらく強制力のあるものになると思います。
こんなことで運営基準違反になったらばかばかしいので従わざるを得ないですね。一年間の猶予期間はあるようなので、その間に準備をしていくことが必要です。
ということで、ホームページ上には運営規程の概要としての重要事項等をどこかに掲載しましょう。まだどこにどのように掲載しなさいという具体的な内容は示されていないので、重要事項説明書のPDFファイルをアップロードしておいて、フッター(ページの最下部)か、事業所概要ページにリンクをペロッとつけておくくらいでもいいのかもしれません。
ただ、もし掲載するのであればPDFファイルで載せるのではなく、しっかりテキスト情報として別ページを作って掲載しておく方がユーザーの利便性も高まります。これに関しては面倒かもしれませんが、検索エンジン最適化(SEO)における優位性は上がります。詳しくはこの記事の後半で解説しています。
重要事項説明書と運営規程概要等の違い
今回の制度改定では「重要事項説明書」とは書いてありません。「運営規程の概要等の重要事項等」と書いてあります。基本的に内容はどちらも大きく変わりません。いわゆる重要事項説明書の抜粋したものが今回掲示を指示されたの「運営規程の概要」というものになります。つまり以下のようなものです。
| 項目 | タイミング | 対象 | 掲載/交付 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 重要事項説明書 | 契約前 | 利用者・家族 | 書面交付 | 介護保険法施行規則59条 |
| 運営規程の概要等の重要事項等 | 常時 | 一般 (誰でも閲覧) | Web掲載義務化 | 省令改正(2025) |
もともと運営規程は事業所に掲示するいわゆる誰でも見れるもの。重要事項説明書は契約前に事業所のサービスを説明するもの。対象者が異なり、目的が異なります。
ただ、基本的には内容が異なることはないので、重要事項説明書をそのまま掲載すると考えて支障はありません(署名欄等を削除するなどの手を加える場合はあるかもしれません)。
ホームページ上の重要事項掲載で注意したいポイント
介護サービス情報公表システム上に掲載するという方法もありますが、あまり使うことがないのでIDやパスワードを忘れてしまったり、システムがわかりにくく掲載できない、という人も多いと思うので、今回は法人ホームページで掲載することを前提にお話しします。
変更があった場合:更新頻度が増える
重要事項等の内容がずっと変わらないということはありません。契約の際の重要事項説明書も定期的に更新しているかと思います。管理者が変わることもあるし、職員の配置人員も変わります。もちろん制度改正のたびに記載しなければ内容も増えますし料金も変わりますので、重要事項説明書はその都度変更しているかと思います。
必ず最新の状態でということまでは求められないと思いますが、少なくとも行政に変更届を提出するタイミングや、実地指導のタイミングには最新版をアップロードしておくとよさそうですね。
追加で費用が発生するホームページ制作業者に注意
いろんなホームページ制作業者がありますが、作業工数に応じて請求が発生する業者が多いと思います。ファイルアップロード1ファイルにつき何円、そのファイルへのリンクを設置して何円、もしくはテキストで掲載するのであれば文字数、ページ数であればページ数に応じて何円という請求が発生します。
重要事項説明書の変更頻度が多くなればその分制作業者に払う料金もかさみます。
これが1事業所だけだったらまだしも、複数の事業所を運営する法人だったら、それぞれの事業所ごとに重要事項説明書があるので、事業所数分の料金が発生します。

今回は重要事項説明書だけかもしれませんが、デジタル原則を強化していく以上、このような厚生労働省からの要求は今後も増えていくかもしれません。つまり、これまでのように、情報が更新されない「そこにあるだけ」のホームページは許されない、ということです。
となると、ホームページ制作業者への料金体系に関しては、従量課金制の業者ではなく、定額料金・サブスク料金で対応してくれる業者に相談する方がコスト削減につながります。もしくはプランの変更で対応してくれる場合もありますので、まずは契約中の制作業者に相談をするといいでしょう。
もちろん、自社でホームページを制作・管理し、重要事項説明書を随時更新していくのが一番コスト削減できるのでしょうが、そういった人材や作業に充てる時間が確保できるとは限りません。
変わっていく制度、求められているホームページの役割に応じて、ホームページ制作業者に関しての見直しをすることもお勧めします。
まとめ
ホームページ上に重要事項説明書の掲示が求められることについて解説しました。簡単にまとめます。
- 介護保険の制度改正により、介護保険事業所の法人ホームページもしくはサービス情報公表システム上に重要事項説明書の掲載が必要となる
- 掲載までの猶予期間は1年間
- 情報が更新されない「そこにあるだけ」のホームページは許されない
- 更新頻度が増えるため、従量課金制のホームページ業者と契約している場合はプランの見直しや業者変更も含めて見直しを
ウェルコネクトは定額料金なので、重要事項説明書の掲載内容変更に関して追加料金を求めることはしておりません。更新頻度が上がることはサイトの価値も上がりますので、結果としてクライアント様の利益につながります。遠慮なくご相談ください。
と、営業っぽい話もしてみました!
2025年現在、義務化も保険者による大きな温度差が
2025年になり、猶予期間が終了。いよいよ義務化がスタートしました。
制度が始まってしばらく経ちますが、自治体によって運用の理解や指導方針に大きな差が見られます。
クライアント様から伺う話でも、
- 担当者自身が制度内容を十分に把握しておらず、「結局どうすればいいのか分からない」といった声がある自治体
- 一方で、「重要事項説明書も運営規程も、どちらもホームページに掲載してください」と明確に指導される自治体
といった具合に、対応が分かれています。
中には、重要事項説明書と運営規程の違いが曖昧なまま運用されている市町村もあり、
「どこまで公開すればよいのか」という判断に迷う事業所も少なくありません。
保険者自体がこのルールや重要事項説明書と運営規程の違いを正しく理解できないまま指導を行っているという由々しき現状もうかがえます。
現状では、自治体ごとの“ローカルルール”が存在しているのが実情です。
実務上の対応ポイント
現時点で確実に対応しておきたいのは、次の2点です。
- 運営規程をホームページ上で公開しておくこと
少なくとも運営規程の最新版は、誰でも閲覧できる状態にしておくのが安心です。情報公開ページや法人概要などのページ、事業所ごとのページにリンクを貼ってPDFを貼るくらいで最低限クリアできます。 - 内容に大きな変更があった場合は、速やかに更新すること
変更日や改訂内容を明示しておくと、確認対応や指導の際もスムーズです。制度改正のタイミングや、管理者の変更、営業時間などの基本情報の変更などがあれば、早めに更新しましょう。
こうしておくことで、仮に自治体ごとの運用基準が変わった場合でも柔軟に対応できます。
「どの市町村でも説明が通じる状態にしておく」──これが、いま最も現実的な対応といえます。
ベストはPDFではなくページを追加する(AI検索対策)
PDFを貼るというのはあくまでも運営指導(実地指導)対策。クリアすればいいというのが目的であればそれで充分です。
でも、これを活かしてさらに一歩先に、SEO的に有利にする方法もあります。ちょっとマニアックな話になりますが、AI時代にはこれがますます重要視されます。
運営規程には、事業所の方針・サービス内容・人員体制・管理者名など、
AIや検索エンジンが“信頼できる情報源”として評価する要素が多く含まれています。
AIは、内容よりも、誰が発信した内容かを重みづけして、優先的に情報を表示する傾向があり、これらはそのための絶好の材料であるということです。
そのため、PDFを添付するだけでなく、
テキストとして個別ページを作り、自社サイト上で公開しておくことが、今後ますます重要になります。
AIによる検索要約(AI Overviewsなど)では、
自治体のデータや事業所の公式ページが引用されるケースが増えています。
運営規程を自社サイト内に整備しておけば、
AIが参照する「一次情報」として扱われる可能性が高まり、
結果的にSEOだけでなくE-E-A-T(専門性・権威性・信頼性)の強化にもつながります。
目立たせすぎる必要はありません。
「事業所案内」や「情報公開」ページの一部として、
落ち着いた導線で配置しておくのが実務的かつ効果的です。
ホームページ運用上で困ったことがあればぜひ気軽にご相談ください。

編集:
介護福祉ウェブ制作ウェルコネクト編集部(主任介護支援専門員)
ケアマネジャーや地域包括支援センターなど相談業務に携わった経験や多職種連携スキルをもとに、介護福祉専門のウェブ制作ウェルコネクトを設立。情報発信と介護事業者に特化したウェブ制作サービスとAIを活用した業務改善提案を行う。








“【2025年版】重要事項説明書はホームページ掲示が原則化。実務ポイント徹底解説” への3件のフィードバック